手描き繰り返し構文 “Blek”
書いた通りに動く線。描きたい通りに動かない手。
指定の点を全て通過するような一筆書きの線をフリーハンドで描くというパズル。
描いた線は終端を起点として繰り返し動き続けるという性質がある。例えば左上から右下にかけてLの字を描くと、右下に段々と降りていく階段のような軌跡を辿る。
左右は描いた線を反射させるが上下に壁はなく、線が場外に行ってしまえばミスとなる。また通過すべき点は彩り以外の差がない有彩色で描かれているが無彩色の黒色はその逆に設定されていて、線が触れてしまえばミスとなる。
描ける線はたったの一本だけで、ミスしてしまえば問題は最初からやり直しになる。
このようなルールなので、黒色を避けさせるようなパターンの模索がレベルデザインの枠組となっている。
黒色の位置で簡単に相似が取れるあからさまな配置をした問題は多い。有彩色の点に触れてしまうと描画がそこで寸断されるという仕様になっているが、むしろこれは利用すべきものとして組み込んでいるだろう。特にオレンジ色の点は、模範解答はここが始点だと言わんばかりの存在感を放っている。
だが当然そうでない問題も存在する。あからさまな見た目でありながらも、同時に見た目通りのあからさまな解答は絶対に通らないというものもある。
雑多な集合体の中に規則性を見出すという枠組はプログラミングパズルに近い内容だが、制御の対象が画一化するにはあまりにも難しいフリーハンドというのがこのパズルのユニークな点だろう。
デジタルの筆跡の制御が簡単にできるはずもなく、解法がわかってもなお思い通りに描けないことは多々起きてしまうが、このパズルの長所としてやり直しのテンポは気持ちいいほど早いので、やり直しそのものが苦になることはない。
しかしながら、どんなにテンポよくやり直せたところで、やっていること自体が面白くなければ、それらはただの作業でしかない。
グリッド等の目安が存在せず、パズルを解くツールがブレるという二重に不安定なシステムで理知的に考えられるわけもない。パターンの読めない問題でまず試そうと思いつくのは繰り返しの美しさなど欠片もない雑な目測か、あるいは点の数px隣を通って始点をずらすという強引な解き方のどちらかで、なまじそれが通ってしまうだけに余計に考えるのが馬鹿馬鹿しくなってしまって面白くなかった。
パズルとして厳密に作るほど思い通りの線が描けない苛立ちが募るばかりで、おそらく本来想定されていたであろう、筆跡が生み出す愉快な動きなどを楽しむ余地は消える一方だった。
かと言って、シミュレーションに寄せて面白くなるとも思えないのだが。少なくともプレイ前の印象では面白そうだと確かに思ったはずなのに、どうしてここまでつまらなく感じてしまうようになるのだろうか?
デモプレイを見るのは面白くても、それを描くのが自分となると、自分の醜い筆致と向き合わざるを得なくなるからだろうか。