邪心の遊戯機械 “Perchang”
神は細部に宿る。この作品の細部には邪神が宿っている。
赤と青のボタンを操作して、色に対応したギミックを動かすことでボールを決められた数以上ゴールへ導くゲーム。
ギミックの色は個別に変えることができるが、一色に対して複数のギミックを割り当てた場合、それらは一度に全て連動して動く。
パズルゲームであるとの触れ込みだが、実際にやることといえばタイミングよくボタンを押すことだけである。
中には一見しただけだとゴールに至るまでに何をすべきかの筋道が見えない問題もあるものの、とりあえずいたずらにいじっていれば大体わかってしまう程度には簡単である。
狙いに合わせて適切なタイミングでギミックを動かすというこのゲームの内容はさながらからくり装置の裏方といったところだろうか。
ボールとギミックの動きには物理演算に由来するであろう慣性が働くが、この物理演算はこのパズルの特徴として大いに悪意を振り撒く存在となってしまっている。
ボールを渡すコースは直線的に作られているが、真面目に3Dの物理演算をしているせいでボールが奥や手前にずれてしまうことが多々起こる。コースから外れないようにするためのカバーやガイドはないので、少しでも操作を誤ればすぐにコースアウトしてしまう。
返しや隙間といった細部の露悪的なデザインには制作者のこだわりを感じずにはいられない。
さらにプレイヤーを苛立たせるのが時間制限による評価システムである。
普通に思いつく方法では間に合わず発想の転換を求める問題もあるものの、大半はミスの数を縛るものや精密なギミックのコントロールを要求するものでしかない。
そもそも上記のようにストレスの溜まりやすい設計をしているのに、さらに操作精度すら求められると苛立ちは増すばかりである。
ただの実績だと無視してしまえるならよかったが、全ゴールド達成で解禁されるゴールドランという問題があるため無視できなくてこれまた腹が立つ。
このゲームをプレイすると、とにかく意地でも簡単にはゴールドクリアされたくないという幼稚な思いがよく伝わってくる。
ちなみに、この作品は全ての問題がクリア可能なわけではない。
バグか設定ミスか、最終問題であるゴールドラン10はゴールドクリアどころかただのクリアすらも不可能である。
ただでさえ不快な思いをすることが多い作品なのに、どんなに頑張ったところで有終のゴールなんてものに辿り着くことはない。この作品をプレイしたところで、後に残るのは歯痒さだけである。
追記
現実の風景を背景に映し出すARモードの追加と、新問15問・ゴールドラン3問を収録した新問題集 “Reality” を追加する大型アップデートが行われた。
さらにこのアップデートでようやくゴールドラン10が修正され全ての問題がクリア可能となったため、折角なので既存のDLC問題集 “Black” と合わせてプレイした。
だが、そこにあったのは悪意をさらに増幅したからくり装置ばかりだった。
BlackとRealityは共通してパズルではなく完全にアクションを求めるレベルデザインとなっている。本編でも苛立たせられた返しや隙間といったデザインはさらに姑息かつ邪悪になっていて、クリア条件もさらに厳しくなるという有様である。
普通のアクションではまずゴールドクリアが間に合わない問題もあるが、それの解法もまたより難しいアクションを求めるものとパズルは完全に置き去りである。
どちらの問題集でも簡単にクリアされたくない気持ちがもたらす悪意をありありと感じ取ることができる。猶予のないアクションを重ねれば重ねるほど難しくなるのは確かだが、自称パズルゲームでそれを面白さと誤解して臆面もなく表に出す愚かしさにはただただ呆れるばかりである。
Blackのほうは、DLCとして出したためか無重力空間を舞台とした問題が出るという点でユニークで、評価を気にしなければおそらくRealityよりは簡単である。
だが、全ゴールドクリアを目指すとなるとより難しいのはこちらのほうだと思われる。無重力ゆえのボールの緩慢さも易化ではなくテンポの悪化のようにすら感じられる。
難しさの質は同じではないが、クソゲーという点ではどちらの問題集も目糞鼻糞である。