命をめぐる物語 “Arrog”
マヌケは実績のために2周したのだが、2周目の最初のシーンで思わず笑ってしまった。
命の循環のスペクタクルも目先の食欲と言ってしまえば他愛もない。
死の受容をモチーフにしたゲーム。
パズルアドベンチャーを自称しているが、実の所パズルはおろかゲームであるかどうかすらも怪しい。プレイヤーがやることといえばルールも目的もよくわからない急に始まるいくつかのミニゲームだけだし、制作者の公言通り30分もかからずに終わるその内容はプレイ体験というにはあまりに短い。
何をすればいいかわかるわけでもなく、手探りで前へ前へと進み、何が語られるかわかるわけでもなく、手探りで先へ先へと進んでいく。そのうちに突然終わりを迎えてしまう。
展開される物語もまた脈絡も何もない。文字による表現はいくつかあるが明快に語るわけでもなく、暗示のようなシーンが断片的に現れては消えるだけで、それらはまるで走馬灯のようですらある。
だが婉曲的でありながら象徴的な物語は、整理すれば一つのテーマを雄弁に物語っている。その表現は確かに見事なものだ。この物語が描いているのは命の循環である。
狩猟民族にとって動物は狩りの対象であると同時に敬意を払うべき存在なのだろう。共に最期を辿り、盛大に旅立ち、次の命を育んでいく。短い描写の中に、一つの死生観が詰め込まれている。
遊ぶには短くつまらないゲームだが、映像作品として楽しむならば密度の高いゲームだと言える。