信号アルバイター “Traffix”
待てばクレーム、進めば事故。
交差点の信号機を操作して、滞りなく交通が流れるようにするゲーム。その内容は合流や横断のタイミングを見計らわせるゲームであり、信号機シミュレータではなく人力の交通整理といった具合である。
このゲームにおける信号機は同じ交差点内で連動して変わるものではなく、あくまで先頭車両に進入許可を出すものでしかない。このゲームの信号機は進入不可の赤を基本として、青または黄で進入の許可を出す。青が無制限の進入許可を示すのはわかりやすいが、黄色は先頭の1台にだけ進入許可を出した後赤に戻るという仕様になっている。
ドライバーは信号に愚直に従うだけで危機回避などは一切行わないため、危険なタイミングで進入許可を出してしまえば衝突事故を起こしてしまう。かといってタイミングを計りかねて待たせ続けているとドライバーは痺れを切らしてしまう。
クリア条件は交通整理の対象となる白い車を一定数捌ききることだが、それまでに事故およびクレームの総数が10回に到達してしまうとゲームオーバーである。安全第一といえど悠長にはしていられないので、交通の流れを俯瞰しながらのテキパキとした交通整理が求められる。
舞台はわかりやすい十字路だけでなく、ラウンドアバウトや路面電車との共用、滑走路を横切る道路などバリエーションは豊かに、そして複雑になっていく。
注意を払うべきものが増え、交通量が増え、ノルマが増え、交通整理はどんどん多忙になっていく。
ここまで書いた通り、このゲームは忙しない交通整理をしていくものだが、その内容は全くもってパズルではない。そのくせパズルカテゴリに陣取っているので、文字通りの自称パズルである。
車の行き先や湧き方は固定なのでそれらをパターン化していくことにパズルを見出せるかもしれないが、それもまたつまりタイミングを覚えることに変わりなく、パターン化せずに解いた場合のアプローチである間隙を縫って進行許可を出していくことと本質的に変わりない。
だがパズルか否か以前に、このゲームはクソゲーである。
滑走路を横切る道路や危険な交差点は確かに現実にも存在しているが、このゲームの道路はそれ以上にふざけている。信号機を設置して然るべき複雑な交差のある道路や、流入が多いにも関わらず優先でない一車線道路など、何を考えて引いたのか理解に苦しむような道路が多数存在する。
道路もふざけているがドライバーもふざけている。こっそり赤信号を無視したり、車間を詰めすぎて事故を起こしたり、最後尾を認識できず突っ込んでしまったりなど、普通に走ることすら怪しい始末である。

実用性の欠片もない落書きのような道路でやる交通整理の一体何が楽しいのか……。
このゲームは無事故ノークレームクリアで無事故がノルマのカオスモードが解放されるが、カオスモードの車両はどんなに待たせてもクレームをつけることはなく、結果としてカオスモードはイージーモードと化してしまっている。
事故車両は玉突き事故を起こしたり二次災害を引き起こしたりなど連鎖反応があるのだが、無事故が前提である以上ただのやり直しアラームでしかなく、そこには何の面白みも存在しない。
ふざけた道路にふざけたドライバーとふざけたルールで、タイミングを見計らっては信号の色を変える作業の繰り返しはひたすら単調だった。
単調な作業で集中力が続こうはずもなく、ミスしてしまえばまた最初から、これがずっと続くばかりでプレイしている最中に感じていたのはただただ苦痛ばかりだった。
追記
大型アップデートが入ったので、それに関する追記。
まずマヌケの目に留まったのは問題順の整理が行われていたことである。概ね難易度順に並び替えられていて、難関都市がことごとく後半に押し込められている。
バンコク、マラケシュ、ボゴタの三つは妥当だが、個人的にはポルトがそこに名を連ねていないのが不満なところである。
ボトルネックが生まれてしまう構造を持つ都市は台数が溢れて手に負えなくなっていくので難しいと感じていて、それが特に顕著な都市だと思っているのだが、どういうランク付けをしているのだろうか?忙しさでも基準にしているのだろうか?
新しく追加された都市は約20、割合で言えば約1.5倍にもなるが、概ね簡単で、慣れるための練習マップという趣向が強いだろうか。カオスモード含め全都市をクリアしたが、あまりの簡単さにとにかく眠くて仕方がなかった。
少ないといえど難しいマップもあるが、安全や都市計画を考えた本来の用途から遠く離れた頭の悪さには呆れるばかりである。
どこがボトルネックになるかとか、どのように注意が向いていくかなどを考えず、どう事故らせるかの悪意だけで道路を引いているのではないかと、そう邪推してしまう。
追記
二つの新都市の追加と、カオスモードのルールを改定するアップデートが入ったので、それらに関する追記。
リリースノートは Bug fixes and performance improvements
とマイナーアップデートを思わせる内容だが、実際はもっと大掛かりな変更がなされている。
新都市は最難関都市ボゴタの後ろに配置されていて、しかも解禁に再度のボゴタクリアを求められたこともあり、どんな魔境が待ち構えているのだろうかとマヌケは身構えたのだが、どちらの都市も比較的単純な構造の道路で、交通量も少なく簡単な内容だった。単にリストの最後に差し込んだというだけで、かつて一度なされたように難易度順に並び変えられることがあれば序盤に再配置されるだろう。
控えめな新都市とは対照的に、カオスモードのルール改定は大胆である。
かつてのルールはノーミスを強制する代わりにロードレイジが無効化されるというものだったが、今回のアップデートでそれらのルールは全て廃止され、ノーマルモードの倍速プレイへと差し替えられた。
カオスモードの解禁にはノーマルモードのノーミスクリアが必要だったため、今までカオスモードは実質的にイージーモードと呼べるような内容だったが、この変更によってようやくそこから脱却したと言えるだろう。
しかしながら、それでもカオスと呼ぶには未だ程遠いように思える。
何のひねりもないただの倍速プレイなので、車の加速度や道路の構造、交通量などに変化があるわけでもなく、ただテンポを上げてもう一度クリアするだけでしかない。合流はスピードが乗ったほうがやりやすいことや、車を捌く過程がある程度パターン化されることもあり、ゲームスピードが上がったほうがやりやすいとすら感じられる。
結局冗長であることには変わりなく、わざわざルール改定するほどの必要性があるようには思えなかった。従来のカオスモードでは溜めた警察車両の渋滞を一気に解消するという遊びができたがそれもできなくなってしまったので、ただ息苦しくなってしまっただけのようにも思える。
とはいえ、このゲームは道路の構造からわかるように露悪的なので、ただ冗長であったとしてもカオスを邪悪と解釈されるよりはずっと喜ばしいことであると納得するしかない。私はこれ以上の悪意に晒されたくはない。
余談だが、今回マヌケはようやく独力でボゴタのクリアができるようになった。かつての初見プレイでは考える気力もなく外部ヒントの真似をしてようやくで、前回のアップデートではカオスモードをかろうじてクリアできるようになって、今回で遂にロードレイジ込みでノーミス達成である。
なるほど確かにパターン化できてしまえば台数も少なく楽な都市である。期間が空いても頭の片隅に記憶されていたのか、あるいは体が覚えていたのか、いずれにしろ関心もなくむしろ忘れたがっているはずなのに、勝手に思い出されて勝手に解かれていく感覚は不思議なものだった。