ヘラジカ行き交うアルカディア “Mooselutions”
主人公の適性は木こりではなく牧畜家なのでは?
通りすがる人影を見るや突っ込んでくるヘラジカ達を適切な位置まで導き、ゴールを塞ぐ柵のスイッチを押させる、というグリッド制パズルである。
直線的に移動する物体を誘導するという点、そして移動をせき止める物を運ぶという点から、倉庫番ライクなパズルの趣向を強く取り入れた変則的な滑る床のパズルといったところだろうか。
迷子の木こりが斧を取りに行くというシチュエーションは謎だが、誰彼構わず突進してくるギミックとしてヘラジカを選ぶセンスは面白い。
滑る床のパズルの趣向を取り入れた倉庫番ライクなパズル、ではなくその逆だと思ったのは、このパズルのレベルデザインが直線的な誘導を大枠としていることもあるが、倉庫番として見るには余白が広すぎるというのが理由として大きい。
選択肢の閉ざし方をギミックを動かす順番に委ねているので、解けないもどかしさは物が思い通りに並ばないという形で表れる。倉庫番特有の、あと1マスが届かないもどかしさに歯痒さを覚える場面はほとんど存在しない。
とはいえ、それはあくまで倉庫番らしさが薄いというだけのことであり、手応えすらも薄いというわけではない。このパズルは、あとひとつの届かなさは薄くとも、手順ひとつ間違えるだけで堂々巡りに陥ってしまうというもどかしさが確かに存在していた。
このパズルはヘラジカ同士に相互作用があるため、彼らは突進するだけの単純な存在ではなく、彼ら同士で互いを縛り合うという依存関係を持っている。
突進したヘラジカは基本的に後戻りができないため、一手動かすごとにギミックが寄ってしまい、後の選択肢が狭まっていく。
勝手に選択肢が狭まるという構造は、一見すると消去法を通しやすくしてしまいかねないが、それを防いでいるのが倉庫番のエッセンスである。
箱という可変のストッパーの導入、そして箱を動かすというルールとヘラジカの位置関係による制限により、選択肢を幅広く見せつつも、実際に正解に至る筋道はか細いという構造になっている。
解決すべき事柄に対して何をすべきかが一目瞭然なようでそうではなく、選択肢が豊富なようでそうではなく、数手選んだ状況から前提の誤りを簡単に切り捨てられそうなようでそうではない。
ただし、大枠がギミックの発動順で共通しているためだろうか、マヌケは問題を解き進めているうちにいくつかの問題で騙し方を先読みできてしまった。
チュートリアル問題を除いても、あっさり解けてしまった問題は決して少なくない。
とはいえ、総合的にはよく練られたルールとそれを生かしたエレガントなレベルデザイン揃いのパズルであることは間違いない。
どうしても埋まらない残りひとつのスイッチに歯痒さを覚え、単純な見落としに己の愚かさを笑い、巧妙な筋道の隠し方に感嘆する……パズルの奴隷たるマヌケの渇きを満たす、素晴らしい作品だった。