自らの死をもって埋めるパズルのピース “Persephone”
あなたに惚れた私はm番目の私。
あなたを救いに来た私はn番目の私。
さらわれた恋人を救うべく、致死トラップが随所に散りばめられた迷宮でゴールを目指すパズル。
死ぬとチェックポイントからリスタートとなるのは凡百のゲームと共通しているが、このパズルの大きな特徴は3体までの死体を場に残せることであり、この死体は足場・スイッチの重石等の基本的な使い方に加え、死亡時の挙動を変えるギミックによって他にも様々な使い道がある。
自身の属性変化と場のギミックの組み合わせにより、このパズルは色とりどりの変化を見せる。
死体を使うのがこのパズルの枠組であるということは、つまりどう死ぬかが思考のポイントとなる。
ゴールに辿り着くために死体の工面も含めどういうルートを辿るべきかを考えるのは一貫しているが、そこに立ちはだかる問題の解決には様々なアプローチが必要になる。
死体や箱をどの方向にどの方向から押すべきか考えたり、一定周期で変わるギミックに歩調を合わせたり、後戻りを制限する崩れる足場を一筆書きしたり、氷面で滑ってみたり、導火線を配線したりなど、ギミックの組み合わせ方によって問題の特色が変わる様はさながらパズルのバラエティパックといったところ。
このように様々な要素が集い七色の趣向を表すビビッドなパズルだが、ルールの持つポテンシャルに反してレベルデザインは粗が目立つ。総じて余白が広いため多少適当に動かしても何とかなることが多いばかりでなく、中には未使用ギミックを大量に残しての強引なクリアが可能なステージがあったり、パズルの主軸であるはずの死とは無縁のステージがあったりする。
多少は歯応えのある問題もあるが、本格的に難しい作品、または複数の要素がエレガントに組み合わさった綺麗なパズルを求めていると肩透かしを食らう。
また、この作品はアンドゥ機能がないことが大きなマイナスとなっていると感じた。
アンドゥは技術的なハードルもあるのであると嬉しい程度にしか思っていないが、この作品に対してアンドゥの実装を求めた気持ちはそれを覆すほどだった。
このパズルは後戻りができなくなる問題、手間のかかる下準備が必要な問題などワンミスに対して巻き戻る手数が多い。ここに等角投影に由来する操作ミスが起こりやすい環境が加わることで、つまらない理由で何度も同じことをやり直させられるストレスに晒され、結果的に作業感の強い作品という印象が残ることとなってしまった。
それでも、この作品は死体を利用するシステムもそうだが、それに加えて多種多様なパズルを一度に味わえる点では面白いパズルだと言える。ストレスを溜めてしまったのはマヌケの自業自得と割り切り慎重なプレイをすべきものと考えれば、この作品は各種パズルの粗漉しエッセンス詰め合わせとしてちょうどいいのかもしれない。
追記
アップデートでおまけ問題集 “Hades The Aftermess” が追加されるも見かけに何の変化もなく、どこで遊べるのかさっぱりわからなかったため色々と調べてみたところ、何と今の今まで真エンドに辿り着けていなかったことが発覚。前々からEDがパッとしないと感じていたけどこういうことだったのか……まさか隠しステージが存在していたとは。
確かに、レベルデザインの余白にすらならない全く無意味な空間が点在していて、その無駄の多さが気にはなっていたけど、本当に隠しが混ざっていたとは……。
分かれ道でアタリを選んだ後にわざわざハズレに引き返すのはそこに何かがあるかもしれないという期待があるからであって、ハズレに全く何もない分かれ道を繰り返されてもなおハズレを漁る気力は持てない。
というかそもそもパズルでかくれんぼをやらせないでほしい。
ちなみに、肝心のHadesについてだが、この作品を倉庫番ライクと称するならば、最も倉庫番ライクな問題集だったと言える。
ただ、レベルデザインの作り込みが浅いうえ、なんと盤外にまで動けてしまうせいで、考えがいのないチート使用倉庫番という不名誉極まりない印象が強く残ることとなってしまった。
おまけのつもりなのかもしれないけど、気分のいいものではなかったのでいっそのことないほうがマシだった。