加算の果ての飽和 “QV”
パズルにアクションをプラス。レベルデザインにギミックをプラス。難易度調整に敵をプラス。
このパズルに、洗練という名のマイナスは存在しない。
魔法の絵筆を振るう次元の守り人・キュビを操作し、次元の核へと至るべく謎と仕掛けと次元の亀裂でいっぱいの先祖代々の遺跡に挑むパズル。
物語の背景として、数多のパラレルワールド、つまり次元の数々を包括管理する次元の核が不安定になったことで、本来繋がらないはずの場所同士が繋がってしまったり、あろうことか異なる次元同士が繋がってしまったという事情がある。
つまり、このパズルは本来繋がらないはずの2点を結ぶ次元の亀裂、すなわちポータルを利用したものとなっている。
このパズルはポータルをはじめとした移動を枠組の主軸として、その補強に倉庫番を導入している。
ポータルには壁と地面の2種類あるが、壁のポータルはブロックを押し込めば向こう側へと送ることができ、地面のポータルはその上にブロックを置けばその対となるポータルを無効化する。
他にもブロックの使い道はスイッチの重石、遠回りさせるための障害物、敵の閉じ込め等様々あるので、数ある選択肢の中から何に使うべきか考えなければならない。
とはいえ、あくまでも主軸は移動なので、レガシーな倉庫番のように1マスを争うような窮地に立たされるわけではない。ブロックを動かすと道が塞がれるという、移動の制限がこの枠組を導入する意義だろう。
移動を軸にした枠組はポータルだけでなく、インクを飛ばして水の上を歩いたり、協力し合って先を目指したりなど、様々な形が存在している。
しかしながら、そのレベルデザインには無駄があまりにも多い。想定された役割を与えられながらも使わずに解けてしまい、物体やギミックが余るというのはレベルデザインの甘いパズルではよくあることだが、このパズルの場合はその数が非常に多い。
余白は時にダミーとして作用したり、道を塞ぐ障害物として作用したりなど想定外の役割を持つこともあるが、このパズルではそういった目眩しになることはなく、ただただ無駄な存在にしかなっていない。未使用の選択肢として終わるだけならマシなほうで、酷い場合は大幅なショートカットを許してしまうことすらあるほどだ。
なぜ余白ではなく無駄になってしまっているのか、それはこのパズルはレベルデザインの甘さ以前の問題として、概形からして既に作り方を間違えてしまっているからではないだろうか。甘さはその結果でしかない。
このパズルは階段で2.5Dのように見せかけているが、ブロックを重ね合わせたり、段差の上からブロックを落としたりするような高さを生かしたルールはなく、ただ盤面を区分けするためだけにしか使われていない。
このパズルはその設計思想の影響か、無駄が多いのを差し置いても解決すべき事柄を順に繋ぎ合わせたような単調なレベルデザインしかないのだが、無駄が余白として機能しなかった理由もここにある。区分けされたエリアのそれぞれで何をすべきかがブロックの対応含め全て完結してしまっているので迷うことがないのである。
このパズルは一つの問題に四つの難易度を設けているが、違いは本来ならまとめられる役割を分離しているだけで、しかも最高難易度ですら余りが出るほどにその役割分担は隙だらけである。そもそもの作り方が甘くレベルデザインも甘ければ、無駄の多いパズルとなるのも当然のことだろう。
さらに、このゲームにはそれ以上に意味のわからない要素が存在していて、このパズルをクソゲーたらしめている。それはアクション要素だ。
ミスした場合に行動を強制的に巻き戻すというテンポの悪化しかもたらさないこの要素は、難易度の上昇とともに差し込まれる回数が増えるという雑な使い方がされていて、それらに対する苛立ちも当然あるのだが、それ以前にこのゲームにおけるアクションはパズルと完全に分離が可能という欠陥を抱えている。つまりこのパズルをパズルアクションたらしめるような役割を持たないのである。
パズルの盤面はグリッド制であることに対して主人公の移動は2Dとちぐはぐだが、主人公の移動をフリーにしたことでパズルにもたらされる特別なルールは何もない。やることはペンギンとのフリーな鬼ごっこだけである。
また、意味のない2.5Dフィールドもアクション要素によって役割を持つようになる。動く足場を乗り継ぐ必要がある場面を作ることでプラットフォームになるが、当然パズルとは無関係である。
わざわざパズルから分離してまで入れたアクションだが、アクション単体で振り返ってみてもキャラクターを動かす楽しさは皆無である。
ダッシュをすると急停止できなくなったり方向転換で硬直がかかるようになるし、足場の乗り継ぎは足場の隅に慣性がかからないという語られざる仕様が操作性の悪さと噛み合って意味もなく難しくなってしまっている。
パズルとして面白くもなければアクションとしても面白くない、それどころか互いにテンポを阻害するだけと、生み出しているのはただただ悲劇的な噛み合いばかり。
一応全てのギミックに役割を持たせようとはしたらしいので、その努力を考えると冗長かつ苛立たしいゲームになってしまったことには余計に哀れみを覚えずにはいられない。