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パズルゲーム感想アーカイブ

※対象年齢: 5歳〜8歳 “Thinkrolls Space”

子供用ドリルに本気で挑むマヌケな大人の図。

指定のポイントを通過してからゴールに辿り着けばクリアとなるパズルプラットフォーム。
子供の論理的思考力を育むゲームであるとの触れ込みだが、歳だけ食った大人であるパズルの奴隷はそれを理解した上で購入した。こういったゲームを作る大人がターゲットとする子供の知能をどう見ているかも気になったし、子供向けと謳いながら実際は子供騙しなのではないかという懸念もあったからだ。確認するには実際に遊ぶのが一番早い。

パズルのレベルデザインは1マス1キャラクターとグリッドを遵守する形で組まれているが、操作キャラクターの移動はキャラクターの形状に応じた慣性の残るフリーなアクション方式となっている。
これはおそらくアクションでグリッドをごまかすごり押しの余地を残すためだったり、形状による物理的特性の違いを感覚的に理解させるためだと思われる。あとは単純に、厳密な1歩1マスの移動よりも転がして動かすほうが子供は楽しいと感じるだろうという判断もあるのかもしれない。
パズルの奴隷が遊ぶ分には操作ミスで水を差されるストレスしか生まなかったが。

肝心のレベルデザインの中身だが、子供向けパズルとは侮れないほど巧妙に組み上げられている。
経由点とゴールを踏むのは主人公の役割だが、操作キャラクターは主人公の他にもそれぞれ違った能力を持つキャラクターがいて、彼らの存在がパズルにねじれをもたらしている。
彼らの性質を理解し、どの順番でどの経路を選んで動かしていくかを考えなければならない。1マス分の穴を誰が埋めるのか?先行すべきは誰なのか?解決すべき事柄が絡み合う構図はまさしくパズルであり、手順を間違えれば普通に詰んでしまう。

このパズルは推奨年齢5歳のEasyモードと8歳のHardモードがあるが、難易度の違いは解決すべき事柄の層の数である。踏むべき手順の数とも言い換えられる。
いくらよくできたレベルデザインといえど所詮は子供向け、大人であるパズルの奴隷がやる分にはどちらも簡単だった。
しかしながら、8歳の時にHardモードを解くならともかく、Easyモードは5歳でやる難易度にはとても見えなかった。
当然序盤は子供も呆れるであろうほど簡単だが、終盤の問題に求められる内容は盤面の整理や偶奇合わせ、ルートの選定とキャラクターの移動などの順序立てなど、マヌケの5歳の頃を振り返るに到底できるとは思えないほど複雑な内容である。
大人目線では簡単でも、このゲームは少なくとも単調ではないし、パズルを自称する作業ゲーとは違い、ねじれた枠組の解消を求めるれっきとしたパズルなのである。

Hardモードを8歳で解けるかというのも怪しいものだが、絡まった紐をほどけるならば、本質的に理解はできずともこのパズルも一応解けるだろう。どちらのモードもやらされることは絡まった紐をほどくことに変わりはなく、違いはどれだけ紐が複雑に絡まっているかでしかない。
これは言い換えれば、5歳でEasyモードをクリアできたなら、Hardモードも間違いなくクリアできるだろうということでもある。
この作品の制作者の想定する5歳児は一般層のほうなのか教育熱心な親の下にある子供のほうなのかはわからないが、マヌケの感覚ではEasyモードのパズルが解ける5歳はかなり利発な子供に映る。

とはいえ、子供にしか持ち得ない目線というのもあるので、理なぞ知らずとも案外簡単に解けてしまうのかもしれない。
子供目線で面白いと感じるかどうかの視点はマヌケはとうの昔に忘れてしまった。このパズルに真に必要なフィードバックは子供からのものだろう。