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パズルゲーム感想アーカイブ

氷河間全力漕 “Arctictopia”

ジャンル分けが意味をなさないパズルの一つ。
大枠は滑る床のパズルだが、結果として得た趣向はストラテジーである。

酷暑による氷河の崩壊で離れ離れになったシロクマの親子をモチーフとした、氷で形成された足場を駆使して川を渡っていく滑る床のパズル。
氷は単に足場として乗り継いでいくだけでなく漕ぐことでまっすぐ移動することができるが、それぞれの氷には移動距離が設定されていて、0になると氷は溶けてなくなってしまう。
残された氷と川の地形を見ながら子供のもとへ辿り着けるルートを考えていくこととなる。

氷を漕いで別の氷に衝突すると自らがその方向に放り出されるというルールがアクセントになっていて、方向転換を制限し足場の自由な乗り継ぎを防いでいる。さらにこのパズルは導入したギミックによってパラメータを合わせるターン制パズルや行列を合わせるスライドパズルの趣向を持つに至っている。
滑る床のパズルでは安易な逆算の阻止のために滑りを止めるものの調達方法を問われることがしばしばあり、ゆえに実質的に一筆書きパズルと倉庫番ライクとの合いの子になりやすいのだが、このパズルでは移動距離という形で既に制限がかかっているため、どのように氷を配置するかというルート構築のストラテジーの様相を呈している。その内容は滑る床のパズルとして非常にユニークである。

しかしながら、このパズルにおけるレベルデザインの枠組はとあるダミールートの中で堂々巡りさせるという1種類しかなく、行き詰まったならば別の道を選ぶだけでほとんどの問題は簡単に解決してしまう。深刻なのは別の道を選んだ後にその中で何をするかを考える必要がないことであり、せっかく得たストラテジーの趣向も滑る床のパズルの選択肢の狭さと相殺されてしまっていた。
滑る床のパズルらしさがないがゆえに同じルートの細部にしばしば釘付けになってしまったが、滑る床のパズルで同じルートで何度も辿り直すような愚行は本来ならば手数を詰める必要でもない限りやらないものだ。

良問がなかったわけではないのだが、概ね単調なレベルデザインに加えて重々しいジャンプとターン終了後のギミック処理によるテンポの悪さでこのパズルはより退屈に感じられた。
滑る床のパズルでありながら同じルートで堂々巡りしたくなる構造を作ったというそれだけでも素晴らしいことだが、プレイ体験としてはやはりマイナスのほうが目立ってしまった。

余談だが、マヌケはクリアに至るまでに一度セーブデータを消失している。
思い当たる原因もなくなぜ消えてしまったのか全く見当がつかないのだが、データ消失バグを抱えているのは致命的なので原因究明が待たれるところである。