この物語は可換である “FRAMED 2”
本編あってこそのNGシーンである。
そろそろOK出してくれない?
コマ割りされたシーンを並び替え、物語が先へ続くようにシークエンスを完成させるパズル “FRAMED” の2作目。
フィルム・ノワールをモチーフとした雰囲気とパズルのルールをそのままに、前作から連なる物語でありながらまた別のストーリーが展開される。2だけでも単体で完結するが、前作を知っていればより楽しめるという構成だ。
今作も前作と同じく逃走経路の位置関係に整合性を持たせるパズルではあるが、整合性に説得力を与える理屈は劇中論理に寄ったものになっている。
前作はパズルを前面として偶奇性等の不整合を劇中論理で解決する設計だったが、今作ではその逆で劇中論理の把握を前提としたパズルが展開される。
しかしながら、劇中論理を保証する理屈が弱いため、今作の解答のアプローチは総当たりに近いものとなってしまった。劇中論理とは早い話が謎解きだが、謎と情報の繋がりが弱いと納得して正解に辿り着くのではなく正解した後で納得するしかない。
前作でも作中論理への理解を求められることはあったが、目的ではなくあくまでパズルのピースの一つであり、理屈が弱くてもそれが主題でないがゆえに欠点として映ることはなかった。だが今作では謎解きが前提として繰り上がっているので、理屈の弱さは明確な欠点として浮かび上がる。
この結果解答のアプローチがどのようになったかというと、試行の結果観測できた偶然に頼るか試行されずに残った選択肢に縋るかの二択である。偶然うまくいく一発芸を見続けている感覚で、ゆえに今作は積極的にパズルとは言いがたい。
今作は脚本と主演男優の影響でNGシーンのアホさが前作以上に増しているのだが、前作では楽しかったNGシーン集探しも、今作では頼まなくても勝手にNGを連発されるので、パターンが尽きると段々と飽きてくるようになる。
パズルの劣化によるテンポの悪化という煽りを受けた物語だが、中途半端でかつ「2へ続く」と言わんばかりの幕引きだった前作に比べると単体で完結する分納得できるものとなっただろうか。
ただし、前作からの流れを汲む一つの物語として捉えた場合、物語の構成として正しいのかは疑問が残る。
ネタバレ項目: 事実は可換である
この物語は前日譚であり、時系列では “FRAMED 2” → “FRAMED” となる。つまり前作の物語は女の復讐劇であり、前作の弱かったオチだが実は復讐完了への礼を示す非常に強いオチだったのだ。メタな仕掛けをも使わなければ殺せなかったという点も復讐の難しさを示すのに一役買っていた。
だが、ならばなおのこと前作を2として今作を先に出すべきだったのではないかと思わずにはいられない。作品ごと順序を入れ替えて印象の変化を楽しめという大掛かりなメタなトリックなのかもしれないが、それで大した驚きが生まれるわけでもなかったこと、そして前作で意図せず生まれてしまった意味合いを考えると、やはりこちらを先に出すほうが自然だったように思える。
入れ替えとやり直しによる無敵の人生も定められた物語の終着点には全くの無力ということだろうか。
メタなトリックにまで導入した展開の入れ替えも結局は物語とは分離したゲームのツールに過ぎなかったというのも残念な話である。
別作品として分割しただけあって映像作品としての迫力は増していたのだが、一方パズルの面白さは失われていたり、前作との繋げ方に難が残ったりなど、結局中途半端に終わってしまった印象が強く残ることとなった。
面白いと思ったことでも匙加減一つで反転するのだから難しい。