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パズルゲーム感想アーカイブ

物語は非可換である “FRAMED”

本編はNGシーンかもしれない。
いい役者は多芸である。

一つ一つのシーンが漫画のようにコマ割りされたシークエンスを盤面として、物語が先へ続くようにシーンを並び替えるゲーム。
物語はフィルム・ノワールをモチーフとしたとある男女の逃亡劇となっていて、シーンの並びを誤ると登場人物は簡単に警察に捕まってしまう。
時間の流れによって原因と結果が生まれるように、因果関係が入れ替わればまた別の結果が生まれる。例えば、廊下で銃弾を受ければ倒れてしまうが、あらかじめ障害物になるものを用意した後で銃弾が放たれるようにシーンを入れ替えれば回避することができる。

シーンを並べ替えるゲームではあるが、プレイヤーが並べ替えるのは主に逃亡者の逃走経路であり、その内容は警察といった障害物と逃亡者の移動ルートの位置関係を揃えるものとしてしっかりパズルになっている。
パズルの理屈では絶対に解けない偶奇性の不一致に登場人物の行動という劇中論理を混ぜて解決させていることがパズルと物語の両方をより面白くさせるユニークなエッセンスとなっている。

とはいえ、このゲームはパズルとしての手応えを楽しむべきものではないだろう。実際、パズルは考えるまでもない簡単な内容がほとんどである。
このゲームの主題は並び替えによって綴られる物語のほうにあるように思った。本編もユニークだがそれ以上にユニークなのが並び替えを間違えた際の反応で、そのバリエーションの多さには目を見張るものがある。中にはシーンの組み合わせ方による独自のアクションを見られるものもあり、正解がわかっていてもあえて間違いを選んでNGシーン集を見たくなったほどだ。

しかしながら、せっかくの物語も中途半端なところで終わってしまっていて、クリアした時の気分は肩透かしを食らったようだった。
エンドクレジットは2の予告で終わるので、もしかすると2まで続くという前提で物語を割っているのかもしれないが、一つの作品として完結していないと感じたのは確かである。
先が気になる気持ちにさせる脚本とそれを煽るパズルという構図、役者の演技の数々は素晴らしかったのだが、それだけにオチの弱さが余計に残念に思えてならない。

ネタバレ項目: 脚本は非可換である

このゲームの最大のトリックは言うまでもなく入れ替えをメタ的に使用したことだろう。配役を入れ替え、展開を入れ替え、物語が根本から変化することへの驚き、同じ展開でも全く違う意味合いへと変わる因果関係の妙こそがこの物語の面白さだった。

マヌケは当初、逃亡者たちを追跡する警察の動きが大規模すぎないか?と疑問を抱いていた。プレイヤー目線では女が男に怪しい荷物を渡しただけで、警察が執拗に追い回すほどの大罪人と呼ぶには説得力に欠けていた。
だが、配役が入れ替わり警部が銃撃の被害者となればその展開にも納得である。最初は無限ループかと思ったが、足元に転がる死体で物語が改変されたのだと理解した。

この手法は強力であるがゆえに諸刃の剣である。改変前の世界に違和感という形で皺寄せが行っていたのもそうだが、この手法が使われたことで緊張感のある犯罪映画というよりもSFじみた運命操作の物語に感じてしまった。
運命を変えたくて脚本を入れ替えるのではなく、そもそも展開がおかしいから脚本を修正するという物語のように見えたのだ。
これはオチの弱さの原因の一つでもあるだろう。

関連項目

FRAMEDシリーズ作品