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パズルゲーム感想アーカイブ

アナーキー・パズル “Piozila”

両極端な良問と悪問が存在していて判断に困るゲーム。
同じ大枠でもルール一つでパズルですらなくなる。

Piozila Screenshot from Presskit

公式のトレーラーが非公開になっていたため、プレスキットの画像をもって代わりとした。
このゲームは粗暴な人間たちに囚われたカメレオン・Leonが脱出を図るというストーリーのパズルである。
パネルを1個ずつ隙間の中に動かしていくタイプのスライドパズルで、Leonや家具などをモチーフとしたそれぞれ大きさの異なるパネルが盤面の中に詰め込まれている。隙間の少ない部屋の中で家具を整理しつつ、Leonを出口まで連れて行けばクリアとなる。

このパズルのユニークな点は体力という形でパネルの移動回数に制限がかけられていることである。Leonだけでなく家具にも体力が設定されていて、体力が尽きた家具はそれ以上動かせなくなり、Leonの体力が尽きるとミスとなりやり直しになる。Leonの体力は食料を取得することで回復できるが、この食料にもまた体力が設定されていて、体力が尽きた食料は消滅してしまう。
食料は回収するか残して重石とするか、食料要らずの最短ルートを行くか、家具の移動が少ない代わりに食料を回収するルートを選ぶか。全体的に考えた効率的な動かし方が求められる。
やはりこの手のスライドパズルの宿命か、移動回数に制限をかけたといえど基本的には簡単だが、手数評価も込みでクリアしようとすると歯応えのあるパズルとなる。

しかしながら、中盤になってLeonを捕らえた人間たちと相対するようになると、このパズルは一変する。
人間たちはプレイヤーによる1手のスライドの後、Leonに近づけるように定められた順番に従って独自に1歩ずつ動く。つまり純粋なスライドパズルからターン制パズルになるのだが、彼らの動きの法則について完全にランダムな内容を残してしまっていて、その結果目的の行動をしてもらえるよう祈るゲームと化してしまっているのだ。
人間から逃げるには読みにくい彼らの思考を先読みした上で人間を隔離する家具の配置を考えなければならないが、彼らは移動経路を完全に塞がれてしまっても家具を一つ破壊することで隔離から逃れることができる。この時に破壊する家具は完全にランダムで、しかもこれを前提とした手数の設定すらある始末であり、余計にこのパズルを運ゲーにしてしまっている。

運ゲーを前提にすらしてしまったことでパズルにこだわる必要がなくなってしまったのか、さらにわけのわからないことに、終盤は盤面の配置がランダムになる。
なんと人間がいない問題ですらこの仕様であり、配置に合わせた手数の設定などはなく、手数評価を達成したければ可能な配置を引けるまでやり直すしかない。

全部で25問と問題数の少ないパズルだが、なまじ手数評価のせいで中途半端に歯応えがあるくせ、上記の運ゲーターン制パズルシステムに加えてテンポの悪さと操作のやりにくさ、視点操作の難による見づらさなどもあり覚えた苦痛はかなりのもので、自称パズルのクソゲーと呼びたくなる気持ちもある。
だがパズルとしての良問が存在していた以上可能性を無視したくもないし、ターン制パズルは家具破壊に優先順位をつけさえすればストラテジーのパズルと呼べるはずなので、そうとは呼ぶべきでないとの気持ちのほうが勝った。
制作者が作りたかったのは運ゲーではなく確かにパズルだったのだと願いたい。