ショット・アンド・ショック “Art Of Gravity”
物理エンジンのデモのような内容だが、魅せ方一つでパズルにもアートにもなる。
3D空間に配置されたブロックにボールをぶつけて崩すパズル。ボールは任意のブロックの任意の面を選んでまっすぐ飛ばすことができるので目標を狙うアクション要素は一切ない。
物理演算を利用しているだけあって、まとまったブロックにボールを当てると衝撃が伝播する様やボールの勢いが減衰していく様を見ることができる。
ブロックやボールはいくつか種類があり、固有の物理的特性や衝突時の挙動に違いがある。最初のうちこそ一気に吹き飛ぶブロックを見てスカッとするだけというパズルとは呼べないような内容だが、ブロックとボールに種類ができ一気に崩すことのできない配置になっていけばパズルの始まりである。
このゲームは見た目通りの物理演算パズルに見えるが、パズルとしての主軸は位置や対応といった関係の線を結ぶことであり、その内容は一筆書きパズルや配線パズルに近い。物理演算はその線を多少歪ませることのできるツールにすぎない。
意外にもしっかりしたパズルではあるものの、線を結ぶパズルの宿命かやはり逆算が簡単で、問題数の少なさもあり早々に終わってしまった。
とはいえ、このパズルに手応えは求めたくない。ボールの射出機構をセットして一気に壊れる様を眺めてスカッとするというのがこのパズルの面白さだった。
物理演算パズルが飾りであるがゆえに物理演算を面白く感じるというのも奇妙な話だが、このゲームのアートはその不思議なバランスの上に成り立っていた。