押しボタン式謎解きゲーム “PUSH”
謝意が悲劇を残す。
立体上に付いているボタンを暗黙のルールに従って押していくゲーム。
ボタン押下のルールは一切説明されず、プレイヤーは試行錯誤の結果を見ながら推測していくしかない。つまりこれは謎解きゲームである。
この作品は “Hook” や “NABOKI” のデベロッパーであるRainbow Trainと、“Scalak” や “OXXO” のデベロッパーであるHamster On Coke Gamesの共同開発となっている。どちらもシンプルイズベストを体現したかのような簡潔なデザインが特徴的なクリエイターだが、彼らの強みであるわかりやすさは謎解きゲームとしての趣向が強い今作にもしっかり表れている。
ルールはどんどん増えていくが、終始サクサクと解き進めることができる。どのルールも複雑になりすぎないよう、推測のしやすい内容に収まっているし、細かな優先順位の違いによる干渉なども抑えられている。
そもそもこのゲームにおける謎解きは前提でしかない。このゲームは次第に空間認識能力を問うパズルへと変化していく。
間違い一つとってもなぜ間違いになるのか、ルールの理解と立体の理解の両方が揃わなければ真の理解には至れない。
ただ流石に簡単すぎただろうか、全体で考えている感覚に欠ける。
ほとんどの問題は、見えているボタンを推測した通りに順番に押すという作業だけで済んでしまっていた。まだボタンが残っていると思っていたら急にクリア扱いになって驚いたり、達成感を得る前に勝手に解けてしまっていたように思う。
ルールの推測も曖昧なままでもなんとかなってしまう程度には簡単で、間違ったとしても軽く軌道修正するだけで済む。
わかりやすさは長所であると同時に、謎解きにおいては短所にもなり得るだろう。個人的には正解を保証する理屈を当てるゲーム、つまり謎解きがあまり好きではないので長所のように思うが、簡単すぎて達成感に繋がっていなかった事実は否定できない。
だがそれらがどうでもよくなるほどに、マヌケの中では一つ突出した不満が存在している。それは最後の問題のことだ。
同デベロッパーの他作品のように、このパズルでもプレイヤーへの感謝の意を問題に代えて表しているが、このパズルの最後の問題のルールはそれ専用の特別なものである。
それまでの問題では、クリアには全てのボタンを押すことを要求されていたが、唯一最後の問題だけは例外で、クリア条件は特定のボタンだけを順に押すというものになっている。
最後の最後に例外のせいで手が詰まってしまうということ、例外に思い至るのに今まで理解してきたルールを捨てる必要があることと、せっかくのサプライズも今までのプレイを台無しにされたかのような興醒めな思いをすることになった。
制作者たちは誰もこれに異を唱えなかったということなのだろうか?どのような経緯があったにしろ、これを通した事実は重い。
終わりよければ全てよしと言うが、反転するとこうも酷い後味になってしまうとは。苦い体験になってしまった。