ほどける箱詰めブロック “Up Left Out”
もっとつまみたかった。
フックに引っかかったブロックを全て外せばクリアとなるスライドパズル。
引っかかったブロックは溝が掘られた方向にしか外せないが、外した後は自由に動かせるようになる。
全てのブロックはスライドさせると何かに当たるまで滑り続けるという性質を持っているため、基本的に滑る床のパズルの趣向を併せ持っていて、さらに途中から外した溝が着色されるようになると配線パズルの趣向も表れるようになる。
このように枠組は様々だが、共通しているのは最小限の余白で自由を制限される中いかにしてブロックをほどいていくかというスライドパズルの基本的な面白みである。
滑る床のパズルの要素は必要とする余白が逆転するので取り合わせは悪いように見え、実際プレイ中ねじれの相殺に手応えのなさを感じたこともあったが、総合して振り返ると意外にも概ね上手くいっていたように思う。
これは仕切りが大きな役割を果たしたように思える。余白をコントロールすることで複数の枠組を切り替え問題にメリハリをつけていたのではないだろうか。
複数の趣向を組み合わせることで生まれるバリエーションゆえに退屈になることがなく、その内容はさながらパズルのアソートといったところである。
言葉がなくとも簡単に理解できるルールのわかりやすさと、余白を絞ってあるからこそ生まれるもどかしさによる意外な歯応えによって気持ちよく解き進めることができた。
しかしながら、おつまみパズルと呼ぶには圧倒的なボリューム不足は否めない。たったの50問で1時間足らずで終わってしまう。
いたずらに水増しすればいいわけでもないし、配分を間違えてバランスを崩せば単調になってしまうだろうから難しいことではあるとはわかるが、この心地よさはもっと長く味わってみたかった。
この制作者の作品はいくつかプレイしていて、その全てで概ね「わかりやすさを体現したデザインは素晴らしいがレベルデザインは単調でつまらない」という感想を抱いていたように思うが、この作品には手こずらされるもどかしさや解けた時の気持ちよさといったパズルの面白みが間違いなくあった。