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パズルゲーム感想アーカイブ

橋梁の工学的再解釈・改 “Poly Bridge 2”

無資格建築士のリベンジ。
契約満了に満足できなかったマヌケが今一度綺麗な設計を目指してみた。

工学的発想で構想を練る動的な橋渡し物理演算パズル “Poly Bridge” のシリーズ2作目。
今作ではシステムもレベルデザインもよりメカニカルになっていて、橋の定義がますます怪しくなっているのだが、クリア条件を満たすものはみな等しく橋であることに変わりはない。

前作は大きな欠点として、設計をより面倒にしてしまう一連の要素あったが、今作ではそれらが大きく改善され、設計が格段にやりやすくなっている。
今作は物理エンジンを見直したことをセールスポイントの一つとして挙げていて、これによって試行の結果が固定さればらつきが出なくなったというのも当然大きな改善点の一つだが、セールスポイントにないUIの改善も大きい。部材の角度を確認できるようになっていたり、1°単位で回せるようになったりなど、綺麗な設計がしやすくなっているのもさることながら、部材の上書きや直線ツールの残存など、かゆい所に手が届くかのような使い勝手の向上などもまた大きな改善点の一つである。
設計が乱雑にならないような改善がなされているのはシステムだけでなく、ルールにおいても同様である。部材による道路の強化を禁じる代わりに強化道路という別の部材が導入されたり、新しい部材としてばねが導入され、補強に依存しない衝撃力の分散をすることができるようになったりなど、部材同士が重ならなくてもいいような設計ができるように工夫されている。
無茶を通しやすく、かつ整形を美しく仕上げやすくなった今作では、設計の面倒臭さに悩まされることはなくなったと言える。
今作のレベルデザインも前作から引き続きよくねじれていて挑みがいがあるので、快適な環境のおかげでようやく然るべき達成感が得られるようになった。

しかしながら、あくまで設計が楽になっただけで、構想はパズルだが以降は作業であるという構造自体が変わったわけではない。
本編最後の問題集は設計すらも面倒になってしまいそうな広く長い問題揃いである。また、今作は本編の問題集に難化改題のChallenge問題集が付属しているが、その他の調整の難化は全てこれらに先送りされている。本編だけをゴールとするにしろ、Challengeをゴールとするにしろ、いずれにしろその面倒臭さを避けて通ることはできない。
いくら設計が便利になっても、便利になった以上にきつい調整を求められれば元も子もない。本編最後の問題の調整には文字通り丸一日かかった。やるべきことはわかっているのに、変化のない調整作業の一体何を楽しめばいいというのか……。
適度な歯応えと達成感の先は、達成感が疲労感に相殺されて解放感へと置き換わるだけでしかなかった。

あとこれは個人的な好みだが、全体的なチュートリアルの不足が今作でも改善されていなかったのは残念な点だった。
一通りのテクニックをWorld 1に詰め込んでいたり、油圧で機構を作る問題のレベルデザインや並べ方に工夫がしてあるのは理解できるのだが、それ以外の説明はまるで足りていない。油圧の分割と接合のルールは結局未だ語られず、新しい部材・ばねのチュートリアルに関しては作中のどこにもない。
実際、マヌケはばねをどう扱えばいいかわからず、しばらくばね縛りで設計していた。慣れれば悪用すらできる便利な代物だが、一切の説明なく放り出されては使い慣れたものを差し置いてまで試してみようとする積極性は持てない。
テクニックや知識を一つ一つ積み重ねていく作りをせず、好奇心に全てを丸投げするスタイルは好きではない。タイトル画面のデモがヒントというのも変な話である。
私は自分の力で一歩ずつ進んでいきたかった。

今作をプレイし始めたのは前作をクリアしてからすぐのことで、冒頭で述べた通り改めて綺麗な設計ができるようリベンジしたい意図もあったのだが、結局前作と同じく醜い橋しか造れなかったし、同じような理由で少しの間積んでしまいもしたので、結果的にリベンジは失敗だったと言えるだろう。ゲーム自体は大幅な改善に成功している分失意も大きいが、それでも今作も無事契約満了に至ってよかったと納得するしかない。

しかしこうして振り返ってみると、物理演算パズルに対するマヌケの意欲はすなわち泥臭い解答を許容できるかどうかにかかっている気がする。そう考えれば独力では限度があるのも当然か。

追記

前年の11月5日、SteamtownにChallengeが追加されたが、そのあまりの物々しさに怖気付いてしまい、マヌケはろくに考えもせずに積んでしまった。
言い訳すると、マヌケがやる気を出すには勢いが足りなかった。原題からしてそもそも設計が億劫になるほど面倒な問題揃いだったのに、その難化改題に手を出すには無資格建築士を休業していたブランクが大きかった。
そんなマヌケの背中を押したのは9月4日のアップデートだった。Poly Bridge 3発売記念として、2種類のBonus Worldが追加されたのだ。宣伝目的だとしてもやりすぎなほどの非常に豪華なアップデートである。これを契機にマヌケは無資格建築士として復帰した。
Bonus Worldは8日にクリア、勢いそのままにSteamtownのChallengeにも挑み、めでたく全問予算内破壊なしクリアできたので、これら2件に関する追記。

解いた順に則り、まずBonus Worldsについて述べる。
橋の何たるかが怪しいこのゲームにおいて、システムすらも完全にパズルのツールとして割り切ってしまった問題の数々がそこにあった。最初の問題からして地形の裏にゴールを設置している有様で、仕様の悪用を前提とした見た目の仰々しさは随一である。
とはいえ、とりあえず手を動かしてみればそれは見かけ倒しであるとすぐにわかった。解決すべき事柄は簡単に浮かび上がるし、それらに大きなねじれはないので分解もまた簡単だった。
だが、やるべきことの理解は簡単でも、その実現が面倒というのが目立った。勢いの保持がテーマになる問題が多く、その解決はジャンプ台をはじめとした位置や角度といった調整がメインになるので、その分達成感は薄れてしまった。
Steamtown Challengeの前哨戦としてのプレイだったので設計の面倒臭さを投げ出さないよう気持ちを奮い立たせる端緒として機能したものの、Bonus Worldsを目的としたプレイだったならばおそらく疲労感のほうが大きく上回っていただろう。

そしてSteamtown Challengeについてだが、調整に時間がかかるのは原題と共通しているものの、その前の構想を練る段階において、原題で悩んだ問題ほど簡単に、そうでない問題ほど長く悩んだように思う。要はかつて楽して解いたツケを払わされた格好である。
だが、今までの経験は無駄ではなかったようで、こんなのわかるわけないだろうと食わず嫌いした問題でも、一途に考えれば案外ひらめくもので、その勢いのまま解き進められた時には設計能力の向上に満足感を得ることができたものだ。
大かがりな変形機構を考える問題は最後まで残るかと思っていたのだが、真にきつかったのは一部始終調整が求められる問題だったように思う。調整作業が上回るラインを超えてしまうと、青天井に難易度を上げても達成感が相殺されて疲労感が上回ってしまうというのは、このパズルの逃れようのない構図らしい。

今までに多くの橋を架けてきたものだが、未だ精巧には程遠いものの、ようやく整然とした設計ができるようになった実感がある。やはり自分の解答に納得がいくかどうかが達成感に結びついているようで、何度も見返したくなるような渾身の設計ができると気持ちがいいものだ。
自分の実力を試したく、3もいずれやってみたいと思う。これ以上に難しい問題があり得るかもしれないと思うとまた積みそうで怖くもあるが……。

関連項目

Poly Bridgeシリーズ作品