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パズルゲーム感想アーカイブ

物理と魔法の取捨選択 “BiuBiu Jungle”

危険を一切顧みないその心のことを、人は無謀と呼ぶ。

鍵を取ってゴールの扉から脱出する倉庫番ライクなパズル。
鍵や扉は足場のない離れ小島や行く手を遮るものの後ろに置かれているので、アイテムやギミックをうまく使ってこれらを解決しなければならない。

メインとなるギミックは拾得アイテムである氷の杖で、敵を凍らせてブロックにしたり、氷を壊したり、レーザーの向きを変えたりすることができる。
他にクリアには必須ではないアイテムとして星が三つ落ちている。拾った数がそのまま評価に繋がるため、最高評価を目指すならば星三つの回収は必須である。
ちなみに氷の杖は必ずしも全て拾う必要はない。このパズルにおいて拾わずに残しておいたアイテムは敵の侵入を防ぐ障害物にもなってくれるので、何をいつ拾い何を残すかの判断も必要になってくる。

このパズルは倉庫番の見た目をしているものの、倉庫番で最もポピュラーな枠組である向きに関するねじれはあまりない。狙いの方向からブロックを押すための足場の数が足りないといった、向きと立ち位置を縛るグリッド制のシビアなもどかしさを求めると肩透かしを食らう。
レベルデザインの枠組はダミーを多数用意してどの敵を凍らせるか、ブロックをどこに沈めるか、トラップの射線を避ける順番をどうするかなどを決めさせるようなものである。

倉庫番でありながら取捨選択を主軸としたルールという大枠の出来は素晴らしいのだが、UIには欠点が残る。
移動はルートを決定してのオート移動だが、考えなしに目的地をタップしただけだと主人公はデフォルトで最短のルートを選ぶため、射線を横切るようなルートをも平気で歩いてやり直しになることが多々起こる。そしてこのゲームにはアンドゥ機能がないため、いとも簡単に危険に身を晒しては作業のようなやり直しを強いられることになる。
せっかくの凝ったレベルデザインも、このせいでテンポが悪いくせ踏むべき手順が多くてうんざりするという逆の印象をもたらすものとなってしまっているのが残念だった。

この作品は、いくらルールやギミックを凝ってもUIとの相性が悪ければそちらに引きずられてどちらの印象も下がるという好例だろう。アンドゥの実装でひとまずは解決するが、それでもまだ不安が残ることはある。
徘徊する敵が出現するようになるとアクションで掠め取らせるような問題が増え、結果として後半になるほどレベルデザインが汚くなっていったので、このパズルの面白さが偶然の産物でしかないという仮説を否定しきれないのだ。

最終問題のナンバリングが1-48と2面以降が作られてもおかしくはないが、このパズルの真価はその時に明らかになるだろう。
はたしてその日は来るだろうか?パズルの奴隷たるマヌケはそれが叶うことを願っている。