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パズルゲーム感想アーカイブ

作用し合う因果の流れ “Causality”

作品タイトルは “Butterfly Effect” でも面白かったんじゃないかな。

勝手に走りまわるカラフルな宇宙飛行士達を規定セグメント数以内にそれぞれ指定の場所まで移動させるパズル。
キャラクターを直接操作するのではなく盤面を操作して導くタイプのパズルであり、何も操作しないとキャラクターやギミックが干渉し合ってしまうため、各々の動きが時系列順に矛盾なく処理されるように盤面を制御しなければならない。

プレイヤーの操作は時間の巻き戻しと早送り、そして宇宙飛行士の移動先を指定する矢印パネルの向きを変えることだけである。
宇宙飛行士の徘徊ルールは1セグメント1マス移動で直進を優先して動く。指定がない丁字路では時計回りの方向転換を、他の宇宙飛行士とぶつかった際は場所に関係なく互いに移動方向を反転させる。

このパズルはワープのギミックが出現するSet 2からその本性を現す。
このパズルにおけるワープは同時刻に2点間で位置を交換する単純なワープではなく、ワープ先の時刻が指定のセグメントで固定されていて使い方次第で未来にも過去にもワープできる代物である。
特に過去に戻った場合が複雑で、ワープを使用したタイミングsと指定されたセグメントであるs'の間、ワープをしに行くAと、ワープした結果指定セグメントの指定の位置から走り出したA'の二人が同時に盤面に存在することになる。Aがワープを使用する事実がなくなるとA'の存在も成立しなくなるため、その間は状況に矛盾が生じてはならないという制約が入ることとなる。
そしてAの挙動がA'に影響されるということは、例えばもう一人の宇宙飛行士Bがいたとすると、BがAに影響を与えればA'にも影響が及ぶ、そしてその結果Aの挙動がBの与えた影響以上に変わる、と考慮すべき影響が多方面に、そして複雑に絡み合うことになる。そのセグメントにおいては些細な変化だとしても、結果として全く違った時系列になることが当たり前に起こるようになるのである。
このようにただでさえ逆算の難しいややこしいパズルであるにもかかわらず、規定セグメント数という制約がこのパズルの難易度をさらに上げている。
規定セグメント数は基本的に最小で、さらに手数の詰め方に一工夫を求める問題が多いため、規定の数に収めるのは一筋縄ではいかない。

パズルの難易度を上げるこれら二大要素により、結果的にこのパズルは最適なルートの構築能力というマヌケが一番苦手としていることを要求するものとなっている。
手数制限が評価制ではなく必須なこと、ヒント機能やスキップ機能がないことも相まって、マヌケはこの作品をクリアするのにパズルのボリュームに似合わぬ多大な時間を費やすこととなってしまった。

一度解き終わってから改めて振り返ってみれば、このパズルのレベルデザインが綺麗に作られていたことはわかるのだが、実際にプレイしている時は過去から遡って計算し直した結果を即座にシミュレートしてくれるゲームの仕様のせいか、よくわからないまま気づいたら解ける形になっていたことが多かった。そのため、レベルデザインの完成度の高さの割に、解けると確信した時の高揚感や悩んだ問題が思惑通りに解決した時の達成感は弱かった。

とはいえ、そう感じてしまったのはマヌケが便利な機能に甘えて思考することを半ば放棄していたからである。
セグメント数から逆算して通るべきルートを選定し、そこで立ちはだかる障害の因果関係を始めから正しく紐解く丁寧なプレイをすれば、このパズルはマヌケが解いた時とは比較にならないほど充実した体験をもたらしてくれるだろう。システムの関係で達成感を覚えにくいだけで、このパズルのレベルデザインが揃ってエレガントであることは確かである。