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パズルゲーム感想アーカイブ

砂のびっくり箱 “CuBuGo”

何度早く終われと願っただろうか。
単調だから?いいえ!

CuBuGo Screenshot

埋め込める形のトレーラーが見つからなかったので画像に差し替えたが、トレーラー自体は用意されているので詳しくは公式サイトを参照。
奇妙な赤い生物・CuBuGoを操作キャラクターとして、吹き飛ばされた帽子のあるゴールを目指すターン制のパズル。
ターン制パズルということで、盤面のあちこちに主人公の行手を阻む邪魔者や徘徊する動物がいる。正面から挑むと主人公はやられてしまうが、背後から襲いかかれば倒すことができる。ただし動物は倒さずにクリアすると実績になるので、できれば生かしたままのクリアが望ましい。
盤面は平面だけではなく壁等の立体上にも貼り付けられた2.5Dとなっていて、さらに等角投影の錯視を利用した接続の変化を導入している。不規則的に変化する足場は非連続な逃げ道として便利に使える一方、2.5Dに由来する障害物の重なりによる事故をも招く。

ターン制パズルでは、敵を避けるための手段としてその場での安易な反復横跳びが通るという欠点が見られることがしばしばあり、このパズルもその例に漏れず同様の欠点を抱えている。
盤面は広いが独立した枠組が寄り集まっているだけで、それらの兼ね合いを考えての余白の削除などもなくその内容は概ね単調だった。
とはいえ、全てが揃って単調というわけではなく、中には全体的なルートや周期への考慮等が必要な良問も存在していた。
全部で45問と数だけ見ると少なく聞こえるが、総合して振り返ると密度は大きかったように思う。

ただし、それはあくまでパズルのレベルデザインに限った場合の話である。
ギミックの一つに同じマスで延々と跳ね続けるノームというものがあり、落ちてくるタイミングでマスに留まってしまうと潰されてミスとなりやり直しになるのだが、そこが通れない場所であることを主張するために設置するならまだしも、これらはただじっくり考えることを咎めるためだけに置かれている。
また、ノームはマスではなく空間に対して作用するため、跳ねるマスと同じZ軸上の壁沿いにも同様のトラップとして機能する。このパズルでは視点の変更によって共有する空間が変化するため、視点を回したタイミングで運悪くノームと同じ空間に重なってしまい押し潰される事故が発生することもある。
等角投影の錯視を利用した2.5Dパズルとして、共有する空間の変化をギミックとして取り入れているのはユニークだとは思うが、それでやることがただのタイミングの見計らいなのはとてもパズルの発想から出るものではない。
ただハプニングを面白がるだけの一発芸の何が面白いのだろう。パズルの奴隷からすればこれほどつまらないものはない。

しかしながら、このパズルはそれらがどうでもよくなるほどに、システムに重大な欠点を多く抱えている。
一体どういう処理体系になっているのだろうか、1ターン1マスのルールを無視して半歩や2歩進んだり、段差に埋まる、マス以外の場所に移動してスタックする、操作が通らない、そのくせ操作に触れる/離すの概念がないのか頻繁に意図せぬ操作が入るなど、ゲーム体験に支障が出るものばかりである。
急いで解こうとすればするほどこれらのバグの頻度は上がっていく。つまりこのパズルは非常にテンポが悪いのだ。
視点の変更に伴う事故が起こりやすいこのゲームで、アンドゥもなしに意味もなく何度もやり直させられるくせテンポは悪いと最悪の噛み合わせとなってしまっていて、溜まったストレスはかなりのものである。

レベルデザインは光るものがあるのに、視点変更による事故を狙っていることなど、純粋なパズルとして捉えるには悪意が窺えて嫌になるし、ボロボロのシステムも相まって達成感よりも募る苛立ちのほうが大きく上回るという残念なパズルだった。
障害物の徘徊経路が固定だったのはせめてもの親切心だったのか、あるいはフレキシブルに経路が変わるルールを組めなかったのか……システムの惨状を見るに後者が濃厚な気がする。

余談だが、このパズルには到達すべきポイントとしていくつかのボーナスが設けられていて、全てのボーナスを取得してクリアすると実績になるのだが、ROBOTCITY 35だけは唯一全てのボーナスを回収することができなかった。回収できなかったボーナスは二つ。
一つはスタート地点付近のボーナスである。向きが固定の邪魔者が道を塞いでいるため遠回りして来ないといけないのだが、この遠回りは昇降する台でアクセスするしかない。だが台が一番上に上がりきるタイミングで邪魔者が必ずこちら側を向くため、どうあがいても突破することができない。台と邪魔者の片方だけをずらすことができない以上どうしようもない。
もう一つはゴール地点付近のボーナスである。こちらは単純に、下に移動する操作が通らないというシステム上の欠陥によるものである。
ちなみに、遠回りの過程にあるボーナスは回収してから後戻りすることはできるが、この場合動物を攻撃せずにクリアの実績が達成できないのでどちらかを諦める必要がある。
早急な改善がなされてほしいところではあるが、このゲームがシステムに抱えた欠陥の数々を考えると、クリア不可能な問題を解決するよりもまず先にやるべきことが山積みなのではと思ってしまう。