生かさず殺さずのフリップ “Dissembler”
単純な見た目で、単純なルールのパズル。
なのになぜだろう、段々とわけがわからなくなっていく……。
隣接する2パネルの位置を互いに入れ替え、同じ色のパネル3枚以上の隣接グループを作っていきながら、盤面上の全てのパネルを消去するパズル。
パネルを入れ替えるには必ず消えるパネルが存在しなければならないというルールがあるので、下準備をしてから一気に消すといった手法は取れない。入れ替えは隣同士のパネルでしか行えないため、後でパネルを動かすための通り道が残るよう逆算しながら消していかなければならない。
見た目はサクサク解ける軽めのパズルという印象で、実際序盤はその通り、おつまみパズルのようにテンポよく解き進めることができた。
だがそのような平和はやがて終わる。パネルはただ色分けされるだけに留まらず、ルールに制限を与える様々な要素が追加されていくので、順調に解き進めることは次第に困難になっていく。
解き進めるにつれ、パネルは模様、つまり方向のパラメータを持つようになる。模様は分たれた2枚が揃って初めて一致扱いとなるので、単なる色一致だけでは消えなくなってしまう。同じ色でも模様によって一致不一致が変わるため、消えるパネルがわかりにくくなる。
つまり隣接関係が直感的に把握しにくくなるのだが、それでもまだこのパズルを直感的に理解すること自体は可能だった。
解き進めるにつれ、パネルは二重に、つまり外側の色で一度消えた後に内包した色のパネルを解放するようになる。模様よりはわかりやすい見た目をしているが、消えた後の挙動が単色のパネルと違う都合で、どこで消すか、どのタイミングで消すか、どのグループに含ませるかなど、考えるべきことは多重になっていく。
つまり逆算が直感的にしづらくなるのだが、それでもまだこのパズルを直感的に理解すること自体は可能だった。
解き進めるにつれ、パネルは固定か否かのパラメータ、つまり入れ替えのできないパネルが存在するようになる。それだけならば単純に入れ替え可能なパネルの組み合わせの手を狭めるだけの代物でしかない。しかしながらこのパズルにおいては必ず消えるパネルが存在しなければならない都合上、あれこれ試そうとしてもそれが叶わなくなっていく。
つまり試行が直感的に通しにくくなるのだが、それでもまだこのパズルを直感的に理解すること自体は可能だった。
そして解き進めるにつれ、パネルは上記全ての要素を組み合わせ、さらには三重もの内包すらも持つようになるのだが、こうなるととうとうパズルは直感的な理解から完全に外れてしまった。
特に固定のパラメータは凶悪なもので、二重三重の中に組み込まれるとわけがわからなくなってしまう。
例えば、非固定の赤単色のパネルと、非固定の外側と固定の内側を持つ別の青単色のパネルを入れ替えると、赤単色のパネルは外側青・内側赤の二重パネルに、青単色のパネルは外側赤・内側固定青の二重パネルになる。これは入れ替えは固定パネルまでの層だけが交換されるという暗黙のルールによるものである。
じっくり読み解けば理解できるルールであっても、即座に理解するのは難しい。どこが動かせるのかわからない……動かせる隣接がどう動くかがわからない……どこで隣接のグループを作ればいいのかわからない……。単純なルールを順に重ねているだけの単純な見た目のパズルであることは終始変わりないのに、気がつけば単純なわかりやすさから遠く離れたパズルになっていた。
レベルデザインを紐解けば、遠く離れたパネルを運ばせたり、使用色を絞ることでグループ分けを工夫させたり、ルールを逆手に取って勝手に消える連鎖機構を作りその間に別のパネルを運ばせたりなど、ねじれの作り方自体は綺麗なものが多い。また直感的にわかりにくいとはいえ、アンドゥの完備とそもそもの盤面のサイズの小ささもあってか、詰まるほどの地獄があるわけでもなく、問題数と時間の比率で振り返るならばサクサク解けたと言える範疇ではあった。
だがそれはマヌケの感覚とは程遠いもので、マヌケが抱いた感想はといえば、おつまみパズルだと思ったらどんどん複雑になっていく盤面に頭が酔っていくまま、おつまみパズルと同じようにわけもわからずガチャガチャしていたら終わってしまっていた、というぼんやりしたものだった。