ノンストップ・マルチタスク “Melbits World”
自称 “THE CUTEST CHALLENGE”。
cuteという単語には「かわいい」という慈しみの意味以外にも、それが転じた「小賢しい」というマイナスの意味合いを持つことがあるが、この作品ははたして。
盤面上のギミックを操作し、自動で歩みを進める4匹のキャラクターが一定数以上ゴールまで辿り着けるように導いていくパズル。
4匹のキャラクターは定められたスタート地点から一定周期で順に排出され、道なりに自動で進んでいく。指定がない限り分岐点でも直進を優先して歩き、壁等の行き止まりにぶつかると進行方向を反転させる。
そんな彼らをプレイヤーは盤面上のあちこちに設置されたギミックを動かすことで制御していくこととなるが、ギミックは操作すると同種のものが一斉に動くようになっている。
道は奈落の底へと案内する行き止まりのないものもある他、道中には触れるとアウトとなる敵も存在するので、それぞれのキャラクターの進行方向に常に気を配り、適切にギミックを動かしていかなければならない。
気の休まることのない盤面上で、勝手に歩き続けるキャラクターと、同時に動いてしまうギミックとのもつれをどう解決するか、それがこのゲームにおけるパズルの枠組となっている。
盤面上には一匹につき一つしか持てないSeedと呼ばれるアイテムが三つ設置されている。4匹をやりくりして全てのSeedを抱えさせ、全員を無事ゴールまで辿り着かせればPerfectクリアとなる。
Seedはただの実績でしかないので、単にクリアするだけならば無視してしまっても構わない。そもそもクリアするだけならば全てのキャラクターをゴールさせる必要もないし、さらに難易度によって制限時間およびクリアラインとなるゴール済みキャラクターの数のハードルを下げることもできる。
ただし、このゲームのレベルデザインは最高難易度でのPerfectクリアが最もパズルとして歯応えがあるように調整されている。そこから遠ざかるほど、このゲームはパズルから離れた作業と化していく。なので、以下の記載におけるクリアとは難易度HardにおけるPerfectクリアを前提としたものとする。
このパズルはクリアの過程において、落下中のキャラクターに飛び出すギミックを起動し押し出したり、ギミックの力加減を変えたりなどのアクション的な手法を求めることが少なくないが、それでも十分にパズルであることは間違いない。
先頭のキャラクターに合わせて単純にギミックを動かしているだけだと後ろのキャラクターの動きを阻害してしまったりなど、キャラクター排出の周期はできるだけ干渉を作り出せるように考えられているし、Seedの配置と制限時間はキャラクターを安全に操作するための猶予を作ろうとすると簡単に足りなくなってしまうようになっていて、4匹全員を監視しなければならない時間ができるだけ長くなるようになっている。
つまり、プレイヤーは4匹の移動経路を総合したルートの構築が求められるのである。忙しない監視によって場当たり的なやり方を強引に押し通すことも不可能ではないが、大抵の場合はパターン化してしまったほうがスマートである。
だが、それがストレスなく行える環境であるかといえばそうとは言えない。
行や列、高さのラインがわかりにくいという等角投影お馴染みの欠点を抱えているのはこのパズルも例外ではない。その上でこのパズルはアクション的な手法を求めてくるため、全体的なねじれの解消のために使う思考のリソースよりも、アクションのタイミング合わせに集中するためのエネルギーのほうが大きくなってしまう。しかもそれらは失敗してしまえばやり直しとなるため、ストレスも馬鹿にならない。
そして、このアクション的手法が求められる場面は必要以上に多い。中にはただタイミングに合わせてボタンを押すだけなどの、成否以外に結果が分岐しないパズルとしての面白みが全くないギミックもある始末である。これらが問うているのはマルチタスクの対応能力でしかない。
このゲームはルート構築を求めるパズルという大枠に対し、場当たり的な対処を求める枠組が混ぜ込まれたことで、結果として中途半端になってしまったように感じられた。
とはいえ、それも致し方ないことなのかもしれない。本来は最大4人のマルチプレイをメインとしたゲームであり、マヌケがプレイしたiOS版はそれを一人プレイ専用に最適化させたものでしかない。
操作すると対応するギミックが一斉に動く仕様は同じだが、マルチプレイではプレイヤーごとに操作するギミックが割り振られる。
マルチプレイでは協力プレイによるスムーズなクリアよりもむしろその逆、一人の操作によってまるで変わってしまう盤面に各々が対処していくという、突発的なハプニングとそれに対する反応を楽しむのがメインのように見える。
それを前提とすれば、中途半端なパズルであることにも納得がいく。そもそも一人でじっくり考えるためのパズルとして設計されていないのだとしたら、なぜ一人用として出したのかという疑問は残るが、パズルとしてプレイして文句を言ったところで、それはお門違いでしかないだろう。