その身は心捧げたもののために “Dokuro”
私はパズルの奴隷であって、お前の奴隷ではない!
姫様と一緒に魔王の城から脱出する、面クリア型のアクションゲーム。
背が低く非力だが二段ジャンプの使えるドクロ状態と、背が高く一段ジャンプしかできないが姫様を抱えられるだけの力を持つイケメン状態とを使い分けて道を切り拓いていく。
自分が通るためだけではなく融通の利かない姫様をも誘導するための道も拓かなければならない点が本質的にアクションを制限しているので、ただのアクションゲームではなく、少なからずパズルアクションではあることは間違いない。
ただし、実際はステージごとにパズルとアクションの配分が極端で、それぞれ別個の存在として分割されている印象を受けた。姫様を抱っこしての素早い動きが求められるアクションステージがあったと思えば、次の面は悩まされて進みが鈍重になるパズルステージに直面するということがしばしば起こる。
とはいえ、パズルステージはアクション割合を限界まで薄め、グリッド制に馬鹿正直に従った上で解くと難しいというだけである。制限を解いてしまえばアクションでのごり押しは普通に通るので、実際に遊ぶ分にはアクション要素の方が濃く感じられる。
また、レベルデザインをパズルに絞って抜き出してみても、青以外のチョークがあまり機能していないこと、姫様がパズルのピースとして組み込まれた面はほとんどなく大半は段差によって隔離されるだけで終わってしまっていることなど、箱を用いたパズルステージのレベルデザインが妙に作り込まれている割には、そもそものルールである各種ギミックがパズルとしての作り込みをあまり意識しているようには見えないというちぐはぐな印象を受けた。
そしてなにより、パズルとアクションのバランスが悪くそれぞれのストレスの溜まりやすい要素を排除できていないため、姫様のためなら粉骨砕身というそもそものテーマが反転してしまい、姫様に対する想いが主人公とプレイヤーとでどんどんずれていく構成になってしまっていたのがつらかった。
勝手に動く姫様に翻弄されて散々苦労させられるのに、何度一緒に同じ花を眺めても、何度彼女の目の前で脅威を取り除いてみせても、彼女の目に留まることは一切ない。なぜこんな恩知らずな女に尽くさねばならないのだろうかとやる気が失せていき、ストーリーが進むにつれそれはどんどん悪化する始末だった。
ネタバレ項目: ストーリー後半〜EDについて
ドクロの姫様に対する想いが強くなっていく影響か、物語が進むにつれイケメン状態がどんどん強化されていくのだが、はっきり言って余計なお世話でしかなかった。
知恵をもって剣とするパズルの奴隷に文字通りの剣を授けられることほど屈辱的なことはない。
そして決定的に幻滅したのがエンディングだった。
恋する人に認知すらされないほど哀れでちっぽけな存在が、それでも力の限りを尽くして彼女の願いを叶えようとするというドクロの健気さの一切を奪っていった最低なエンディングだった。お前今まで本気出してなかっただけかよ。
あれはただのおとぎ話で、命を懸けてまで頑張ったからこそ姫様の願う理想の姿になれたという解釈もできなくもないが、結局なぜ腹が立ったかといえば、体も力も小さなドクロのありのままの姿における努力がクローズアップされず、結局姫様を助けるためには見たままの大きな力が必要で、それを行使するイケメンのほうが本質であるかのように見えてしまうからなので、これが拭えない以上どんな逃げた解釈をしたところで最悪な後味が変わることはない。
エンディングの種明かしがなければ姫様を煩わしく思うだけで済んでいたのに、そのせいで両方とも嫌いになってしまった。お前らお似合いだわ、末永く勝手によろしくやっててくれ。そしてもう二度と私を巻き込まないでくれ。
献身の源泉がパズルの奴隷としての誇りだけだったマヌケには、イケメン状態と自身の保身にしか興味のない注意力散漫な姫様に執心する主人公の気持ちを理解することは最後までできなかった。
考えることがアクション要素の肥大化によってどんどん隅に追いやられていく構成になっていたこのゲームは、マヌケにとってはただただ苦痛でしかなかった。