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パズルゲーム感想アーカイブ

ひっくり返して、折り畳む “Fliplomacy”

タイトルの元ネタとも言える英単語 “diplomacy” は “diploma” から派生したものである。それぞれの意味は「外交」「免状」と一見関係なさげな二つの単語だが、語源にはしっかりと縦の繋がりがある。それを知ればタイトルがより趣深く感じられるかも。

盤面上に存在する全ての旗を指定の色に染めるパズル。
操作キャラクターは基本的に一歩ずつ移動するが、同じ色の旗が連なっていればそれらをまとめて飛び越すことができる。旗の色は2種類で、反転させるには旗の上を飛び越すか、盤面上のオブジェクトの色を変化させるパネルを踏む必要がある。
ギミックは色々あるが、大別すると単純にクリア条件を増やすもの、進行方向や位置関係といった盤面上を動く上での対応関係を制限するもの、手数の偶奇で挙動を変えるものの3種類に分けられる。

このパズルは問題によって手数制限が付いていたり、通ったマスが消えていく後戻り不可能な問題が出てきたりする。それによって難しくなっている面も多少はあるが、それを差し置いてもこのパズルは存外に難しい。偶奇で変わるギミックやどの方向からマスを踏むかで挙動が変わるギミックが重要となるこのパズルでは、手数はかえって何を踏むべきかの指標になりさえするし、問題自体に設定がなくともギミックでもマスは崩落するし、後戻りできなくなる状況が生まれることは往々にしてある。
ルートの選定には既に指定の色に染まったものであってもあえて崩す必要があるかもしれないという不確定な情報による難しさが基本にあり、そこにダミールートを設置することで正解への道を閉ざしている。
ダミーの置き方が少々乱雑ではあるものの、各種パラメータが揃う正しいルートの選定を求めるというこのパズルは、歯応えも解けた時の達成感も十分だった。

しかしながら、この作品にはUI上の二つの問題があり、パズルの出来に反して気軽にプレイできないものとなっている。
一つはそもそものテンポの悪さである。特段遅いというわけではないのだが、一歩一歩が踏みしめるような挙動で、歩くようにスムーズに移動できないというのは存外にストレスになる。
そしてもう一つは、ヒントボタンがリスタートの隣に設置されていることだ。これだけならばただのありがた迷惑で片付けられるところだが、致命的なのが評価に関わってしまっていることだ。一度ヒントボタンを使ってしまうとクリアの評価が下がるのだが、ヒントを使用した事実が残ってしまうため、そのセーブデータでは永劫最高評価を達成できなくなってしまう。実際マヌケは一度うっかり押し間違えてしまい、ヒントの使用をなかったことにしようにもその方法が見つからず、結局最初からやり直す羽目となった。よく使うボタンの隣にゲームオーバー直結のボタンが設置されているのにどうして心穏やかに解くことができようか?

画竜点睛を欠かないでいたならば文句なしの良作と呼べただろう。
基本の枠組がしっかりしていただけに、パズルに関係のないところで大きく株を落としていたことが残念でならない。