ひらめきを育てる似非科学 “Germination of Brain”
Well-definedでない物理法則の世界はきっとこんな感じなんじゃないかな。
種子を操作して、ステージのどこかに設置されている植木鉢に辿り着けばクリアとなるパズルアクション。
ステージ内の動かせるものやギミックなどが科学的な常識に基づいた挙動をするのが特徴であり、例えば横長のブロックを坂道などを利用して縦にすることで足場の高さを稼いだり、水を貯めて箱を浮かせたりできる。
自身のアクションだけでは実現し得ないことをギミックの組み合わせを試行錯誤することで解決していくこのゲームの内容は、謎解きか否かは意見が分かれるであろうものの、少なくともパズルであることは間違いない。
しかし、その特徴である科学的な挙動については突っ込みどころが多い。私の信条は「パズルにおけるギミックはルールである」なので、この作品がそれを満たしているかどうかに関して疑問が残ってしまったのは大きなマイナスだった。
具体例を挙げると、同じ箱でも端に置くと重力と力のモーメントによって落ちてしまう常識的なものと、接地面が残る限りどんなに端に追いやろうと落ちない非常識的なものが混在している。
また、全てのギミックが科学的な常識から自然と推測されるような挙動をするわけではなく、突然倒れてくる木や天井、燭台を着火させる花や虫など、科学的な常識とは全く関係のない謎解きじみたギミックが出てくることすらある。
科学的なパズルを自称してはいるが、それほど現実的なわけではないというのがこのパズルの本当の特徴である。
他にもシステムで欠点が目立ち、ゲームのテンポが悪い。妙に遅いふわっとした移動と、ステージの長さに対する中間ポイントの不在、種子の傷つきやすさも相まって、アクションの難易度が上がりきる終盤は特にストレスが溜まりやすい。
この作品は頭を使うよりも動き回って探索する側面のほうが強いので、このテンポの悪さは一般的なテンポの悪いパズル以上のマイナスとして作用していた。
ちなみに、このパズルにはそこに到達するのに少々工夫の必要な場所に水滴が置かれていて、これを回収できたか否かが実績となっているのだが、マヌケの努力不足ゆえか水滴が回収できなかったステージが存在する。足場を3つ積み上げても明らかに届かない高さに配置された2-11、高さが足りないが足場を運ぼうとすると入り口がつかえる3-4、そもそも水滴がどこにあるのかすらわからなかった3-14の3ステージである。
もしかしたら秘密のギミックか何かがあって難なく回収できるのかもしれないが、本来見つかるべきものが常識的な努力で見つからないというような意地悪にはパズルの奴隷といえど流石に付き合いきれないし、そうでないならばそういった欠陥を残しているということでもあるので、いずれにしろこの作品はそこまで真面目に作られていないということなのだろう。