ポンコツの魔法 “Magibot”
君がどんなにあらがおうとも、私はパズルの奴隷だから。
襲い来る黒い雲や原生生物といった、危険に満ちたとある惑星を舞台にしたパズル。
主人公は限定的ではあるが魔法の力を使えるロボット「アイロ」。製作者ドクター・ローレンスより人類を救えとのミッションが下り、アイロは各地に設置されたテラフォーミングビーコンの起動と、その修理に必要なキーキューブを集めるための冒険に出る。
2Dプラットフォームのパズルアクションだが、素のアイロができる行動は左右の移動だけでありなんとジャンプすらもできない。円形のフィールドの中に入ると色に対応した魔法を使うことができるので、これを駆使して進むこととなる。
ステージは魔法の力に関するいくつかのチュートリアルステージを除けば大きく分けて2種類で、一つは与えられたフィールドのセットから自由に配置してゴールまで進む問題で構成されたパズルステージで、もう一つは最初からフィールドが全て固定されたステージで追手の黒い雲からひたすら逃げ続けるというアクションステージである。
全部で40ステージ弱と少なく見えるが、問題として分割されたいくつかのセクションを1ステージにまとめているので、実際はそこまでボリュームがないわけではない。
しかし、だからといって中身が充実しているわけでもない。左右移動だけでは解決できない問題に対して、限られた手札の中で解決可能な組み合わせを探らせること自体はパズルなのだが、手札の用意の仕方がいい加減なのだ。
パズルステージではフィールドを重ねて配置することができないという制約があるものの、パズルアクション特有の境界の曖昧さを生かしたごり押しは容易に通ってしまう。なにより、アクションステージでフィールドの数を節約するのが目的と言わんばかりのあからさまな置き方がされているフィールドがあるので、制作者が解き方として認めてすらいると言っていいだろう。
仮にそれを無視したとしても、そもそも使える魔法の数は全体的に多めなので、限られたリソースのシビアな分配に関する熟考が必要になることはない。
実際シビアな何かが求められるとすれば、それはパズルではなくアクションのほうである。
間隙を縫うようなアクションを要求される場面は少なくないうえ、アクションステージではやられる度に一からやり直しとなる。
パズルアクションを期待してこの作品をプレイすると、予想以上に薄いパズル要素とそれに反して要求されるアクション要素というアンバランスさ、やり直しのテンポの悪さといったアクション要素に起因するストレスに晒されることとなる。
単純にクリアするだけならば、余計なストレスを溜めないためにもキーキューブはある程度無視して進んだほうがいいだろう。かなりの数が余るので、勝手に拾える分だけ集めていてもクリアに差し支えはない。
ちなみにマヌケはiOS版をプレイしたが、言語設定がなかったので日本語でプレイせざるを得なかった。改行が指定されていないのか文章はどんどん横に伸びては縮んでいくうえ中身は機械翻訳丸出しという残念な内容だったが、オリジナルではチュートリアルの魔法の本のような細部にまでこだわって作られているようで印象が全く変わるので、できれば原語版でのプレイが望ましい。
ネタバレ項目: 物語の結末について
パズル自体には全く関係がない……いや多少はあるのかもしれないけど、アイロが最後のビーコンを前にして執った修理拒否という行動について、私はあの選択について納得がいかず最悪な後味でゲームを終えることとなってしまった。
色々と理由はあるが、何に一番腹が立ったかといえばプレイヤー視点の苦悩に対するケアが全くなかったことである。主人公はアイロであるとはいえ、プレイヤー視点では彼が見捨てることとなった人間側の苦悩も見えてしまうので感情移入の対象がばらけてしまう。そしてなにより、何度も何度も原生生物に行く手を遮られリセットを繰り返させられストレスを溜めた身としては、どんなに原生生物の健気さをアピールされたところで何の慰めにもなりはしなかった。
ゲーム側の事情として、ビーコンが起動してしまうと障害物が消えてしまいパズルが成立しなくなるからこの結末以外採用しようがなかったというのもあるかもしれないけど。
ちなみに、マヌケならばどういう結末を選ぶかといえば即起動一択である。私はパズルの奴隷なので、ローレンスと彼が背負っている人間たちがどれだけ身勝手な人間であろうとも、解決すべきミッションという名の問題を出し続けてくれる存在であるならばそれだけで付き従うことを選ぶだろう。