絶望的監視網 “Vive le Roi”
有能な見張りにことごとく弄ばれるマヌケ。
ならば断頭は妥当なのではないかと心が折れそうになったのは一度や二度ではない。
フランス革命の歴史を変えるべく、見張りに見つからないよう監視の目を避けながら断頭台に縛りつけられた王のもとに救出に向かうという内容のゲーム。
操作はポイントタップによる位置指定だけであり、移動は経路の選定も含め自動で行われる他、到着地点にアイテムやその場で起動可能なギミックがある場合は対応したアクションを自動で行う。
メインとなるギミックは各地で監視の目を光らせる見張り達で、特定周期で向きを変えるためその合間を縫って移動しなければならない。しかしその周期は見張りごとにバラバラであり、さらには不規則な周期で動く見張りやギミックの起動で挙動が変わる見張りもいるので、彼らがどのように動くのかに関しては正確に理解しておかなければならない。
この作品は一見スニーキング要素のあるシンプルなパズルアドベンチャーのように見えるが、その中身は凶悪なまでの死に覚えゲーであり、はっきり言ってクソゲーである。
見張りはとにかく有能で横方向の視界が広い。安全地帯がほとんどないため、タイミングを合わせるために少し離れて一呼吸置くといった手立ては基本的に取れない。クリアするには複数の見張りの周期の噛み合うタイミングをうまく見つけるしかない。
しかしながら、その猶予は主人公の移動を先読みしてタイミングを合わせたとしてもなおシビアに設定されている。さらに主人公の動作は完了するまで判定が残るというプレイヤーが不利となる調整が施されている。
このせいで、見張りの動きを掴もうにもスタート地点で待機していたら捕捉、絶対に見つからない距離だろうからと油断していたら高台を跨いで捕捉、一人目を掻い潜っても二人目で捕捉、あと一歩のところだったのに振り向かれて捕捉、物陰に隠れきる寸前で捕捉と、とにかく見張りの有能さを何度も見せつけられる羽目になる。何が悲しくて王の首が刎ねられる不快な光景を何度も見なければならないんだ。
さらにこのゲームのクソっぷりに追い打ちをかけているのが手数制限である。
詰めきれていないのか、全ステージ最小手数というわけではないが、ほとんどの問題は1手の猶予すらない。
それだけならばクソ要素にはなり得なかっただろうが、それを完全にクソたらしめているのは位置指定という移動方式の操作性である。
位置を指定するだけならば簡単だが、指定した場所での行動に関する具体的な情報は一切ないため、ギミックの起動も含めて指定が入ったかどうかを確認する術はない。実はギミックにギリギリ近い別の場所を指定していてギミックが発動せず1手損するということが頻繁に起こる。
また、不可能な移動先や発動不可能なギミックを指定した場合は主人公が首を振って目的の行動が遂行できないことを示すが、ただ首を振るだけでも1手消費されてしまう。
この仕様により、何をすべきかがわかっていても思い通りの動作にならなかったせいでいたずらにリトライ数が嵩んで理不尽な思いをする羽目になる。何が悲しくて目の前の王を助けずにただ眺めるだけというアホな光景を何度も見なければならないんだ。
確かに、このゲームにはギミックをどの順番で動かすべきかとか、見張りの目をどういうルートで掻い潜るかといったパズルアドベンチャーの要素もあったのだが、超有能な見張りの目というプレッシャーとギロチン乱舞によって相対的にパズル要素を薄められていった結果、この作品に対する印象は非常に質の悪い死に覚えゲーで揺るがぬものとなってしまった。
パズルの奴隷といえど、こんな思いをしてもなお冷静にパズル要素を拾えるだけの度量は流石に持ち合わせていない。