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パズルゲーム感想アーカイブ

定型的監視網 “Vive le Roi 2”

無能な見張りに恐れおののくマヌケ。
有能な見張り集団というトラウマが残した爪痕は大きかった。

ゴミのような操作性でシビアなタイミングの見計らいを要求するという、パズルが霞んでしまうほどの内容の酷さでマヌケに深い傷を負わせたクソゲー “Vive le Roi” のシリーズ2作目である。
酷い思いをしたにもかかわらず今作も購入したのは前作と併せてまとめ買いしていたからで、買うかどうかの選択を前作のクリア後まで延ばしていたならばプレイすることはなかっただろう。

とはいえ、今作の内容はルールから本質的な要素に至るまでほとんど別物である。見張りに見つからないように王のもとに向かうというベースは同じだが、ギミックの仕様が大幅に変更されているのだ。
最大の変化は見張りが勝手に振り向かなくなったことであり、移動のタイミングを制限するものからルートを制限するものとしてパズルアドベンチャーにふさわしいギミックに収まっている。今作でも横方向の視野が遠くまで通りはするものの監視の精度は前作ほど凶悪ではなく、向きは爆弾で音を立てない限り変わることはないため、理不尽なタイミングで見つかることにストレスを感じることはまずない。
ギミックの種類もかなり絞られていて、前作から続投したものはスイッチや爆弾、トンネルくらいで、どこで使うべきかわかりにくいものは容赦なく削除されている。見張りもギミックの一つと呼べるが性質が変わったため別物と言っていいだろう。
スイッチとトンネルは色分けにより対応関係がわかりやすくなっていたり、移動ルートの自動プレビュー機能が付いたりなど、今作はとにかくルールをパズル向けに絞りその内容を明確に、そしてわかりやすくしようとした意図が見て取れる。目の前のものを操作できなかったり王の前まで来て何もしない主人公のアホさ加減は健在だが、あるべきパズルアドベンチャーに立ち返っていることは確かである。

今作はまごうことなきパズルだったが、前作で負った傷は予想以上に深く、この作品を冷静に評価できないでいる。マヌケの評価軸は前作からの改善点という形で固定されてしまっているので、一つの独立したパズルゲームとして捉えられるだけの余裕は持てていない。
先入観はなるべく持たないよう努めているものの、それでもやはり簡単に拭えない時もあるというのを痛感する。ただ自覚があるだけマシなほうで、気づかないうちに普段の評価軸では通らないはずの屁理屈で贔屓してしまったりこき下ろしてしまったりすることはきっとこの先も起こるのだろう。

追記

New designを引っ提げての大型アップデートによってUIが刷新され、移動方式がポイントタップによるオート移動からスワイプによるコントローラー風のマニュアル移動になり、それに伴い手数評価システムも削除された。
根本からテコ入れしたからなのか、このアップデートによってセーブデータが消滅、絶望のやり直しをする羽目に。ろくな思い出のないシリーズなだけに気乗りしなかったものの、なんとなんと1時間半でクリアできてしまった。

初めてクリアした時からかなりの月日が流れた今、データが消えたからとはいえ改めてこの作品を一通りプレイしたことで、この作品を独立したパズルゲームとして冷静に分析できるようになったと思う。
落ち着いた頭で挑んでわかったのは、この作品が退屈でボリュームのない、考えがいのない平凡なパズルアドベンチャーであるということだ。
逆算を難しくするギミックもなければ、レベルデザインの枠組にねじれも何もない。スイッチや見張りの向きなど、解決すべき事柄を順番に処理していけば解ける偶奇性しかない単調な仕掛けしか用意されていない。
思考の落とし穴を作る方法としてダミーを設置しているが1層分しか用意されていないため、仮に何も考えずに解いたとしても単純な総当たりで早々に終わってしまう。

つまり、昔の感想はクソゲーの後にプレイしたからこそ出てきたものであり、その内容はマイナスがプラスに転じたことを褒めただけに過ぎないということだ。アブソリュートな評価軸の上で言えば本来この作品はマイナスのエリアにいたはずで、それ相応の評価となるべきだったのだが、そうならなかったのがまさしく先入観の力ということなのだろう。

知らない間に3が出ていたこのシリーズだが、今までに抱いた感想がクソかその反動か退屈かしかないのに手を出そうと思えるほど私は勇敢ではない。

関連項目

Vive le Roiシリーズ作品