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パズルゲーム感想アーカイブ

眩暈の箱 “GraviT”

信用事故を起こしてしまったパズル。
それは魅力に直結していたがゆえの災難だった。

GraviT Screenshot

トレーラーが見つからなかったため画像に差し替え。
盤面全体を90°回転させることで中のブロックが一斉に動くパズルである。滑る床のパズルとスライドパズルの合いの子といったところ。
全ての色付きブロックを対応する場所へ同時に揃えることでクリアとなる。

滑る床のパズルでは滑りを止めるものの存在から逆算されやすいという弱点があるが、このパズルにそういった甘さは存在しない。
全体を動かす操作に複数のブロックの存在と基本的なルールの時点で既に十分なほど難しいのだが、滑りを止める壁は最小限で、そのくせ嵌まり込むと脱出に手間がかかる穴があったりなど、辿り着きたくとも辿り着けず、避けたくとも避けがたいクリティカルな配置が随所に光っている。
また、滑る床のパズルでは初動を誤ると永遠に解けなくなるという問題がしばしば見受けられるが、このパズルにはそれがない。初期配置に依存せずに難しさを確保しているのだから驚きだ。
問題数は50と少ないが密度は高く満足感も大きかった。特に終盤は色を揃える以前にそもそもそこにブロックを運べるかどうかすらも疑わしく思えてしまうほどの絶望盤面が待ち構えている。

ただし、ブロックの色分けは不要だったように思う。
そもそもブロックをそこまで運べるかどうかが難しさの大部分で、運び方がわかってしまえばあとはそこに収まるようにあらかじめブロックを並び替えるだけの作業でしかなかった。
解法から察するに、特定の整列した状態から崩れていく段階に合わせてレベルデザインを調整していったように思われるのだが、それもまた色分けがパズルとして機能が弱い理由の一つだろう。色分けそのものを主題にしているのではなく、手軽により難しくするべく後付けで着色しただけのように見える。

自信をなくすほど難しいパズルとして凡百のパズルとは一線を画する作品ではあったが、しかしながら本当に解けない問題が混ざってしまっていたのは致命的だった。疑惑の出た問題は解けると確認できるまでに2回の差し替えが入っている。
普通のパズルでも重大だが、困難なほどの難しさを魅力とするパズルでは解けない問題の存在は信用問題としてより深刻になる。

ともあれ、レベルデザイナーがパズルに対して確かな理解と審美眼を持っているのは間違いないと思われるので今後に期待したい。