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パズルゲーム感想アーカイブ

営業部門の果てなき利潤追求 “Rip Them Off”

寛大な提供を受けた手前申し上げにくいが、僭越ながら取締役会には店舗のバリエーションを打診したい。
でないと退屈で辞めたくなってしまう。

貪欲な利潤追求を是とする企業の一社員として、とある区画の商業施設開発に乗り出すタワーディフェンス風のストラテジー。
区画にやって来る (カモ) は皆無尽蔵のキャッシュを持っていて、広報部門のおかげで通り道に建てられた店舗で必ず散財したくなるようになっている。
プレイヤーは取締役会の期待に応えるべく、彼らからより多くの金を巻き上げられるような店舗の配置を考えていくことになる。

客のキャッシュは無限でも、店舗の収容人数はそうではない。店舗には種類があり、同時に収容しておける人数の上限と一人から搾り取れる売上額、そして搾り取るまでにかかる時間が設定されている。
単価と処理能力は概ね反比例するようになっていて、処理能力と設置に必要な資金は比例するようになっている。客の通りが少ない場所では単価の大きな店舗が効果を発揮するだろうし、多くの客が押し寄せる一等地では資金を投げ打ってでも処理能力の高い店舗を建てるべきだろう。
口コミ効果か広報部門の尽力の賜物か、日数が経過するごとに区画に押し寄せる客の数は増えていくので、店舗の処理能力にも限界が来るようになる。幸い収益は資金としてプレイヤーが自由に扱えるようになっているので、店舗を建て替えたり増築したりと状況に応じて投資していく。
早送りもできる他1日ごとにやり直せるので試行錯誤はやりやすい。取締役会から提示されたノルマはあるが社是に反してやさしいので、最高益を目指しての区画開発すらも乗り出したくなる。
福利厚生を蔑ろにしたり長時間労働を推奨するような隠す気のないブラックさには苦言を呈したくなるが、意欲的になれるという点ではいい職場である。

しかしながら、店舗の性能差が大き過ぎてストラテジーと呼べるほどの幅がないというのが致命的な欠点となっている。処理能力が大きいほど建てるのに資金が必要になるというのがネックで、頑張って建てても単価が低いために採算がとれず、結果として処理能力の低い店舗に最初から最後まで頑張ってもらうというのがどの区画でも正着となっている。●はEmerald Cityの13日コースですら出番がなかったほどだ。
特に◆と◣の利便性が高く、半ばこれをどこに差し込むかを探すゲームと化してしまっている。
◆は処理能力は最低だが収容人数の多さがデメリットをカバーしていて、しかも成長後は−を超える単価を叩きだす。
◣は単価はほとんど成長しないが、最速の処理速度のおかげで高額な店舗の代替として十分なほどに機能してしまう。
ハイスコアを目指すには間違いなく頭を使う必要があるだろうが、パズルと呼べるほどのねじれの存在には疑問が残る。どの区画でも似たような組み合わせに落ち着いてしまい、店舗の位置や建てる順番を変える程度のことしか考えることがなくなってしまうのは、ストラテジーとして面白いとは言えないだろう。

考えようとすると楽しくなくなるが、それまでが楽しかったのは事実なので、何も考えずに直感的に楽しむべきゲームなのかもしれない。長期日程のコースの最終日で大挙した客によって恐ろしい勢いで収益が上がる様などは見ているだけでも楽しかった。
前任者のように病んでしまっては元も子もない。

関連項目

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