六角形と三つの選択肢が織りなす不規則模様 “Hexologic”
ペンシルパズルにおけるヒント数字は単なる善意の存在ではない。パズルの構造そのものを決めるいわば骨組みでもある。
このパズルはその事実を良くも悪くも深く理解することができる。
与えられた条件を満たすよう、六角形のマスに1、2または3の数字を埋めていくパズル。
数独やピクロスに代表されるような、メモをとりながら理詰めで選択肢を絞っていくパズル、いわゆるペンシルパズルに相当する。
特定のマスの端にはヒント数字が記載されているが、これはその直線上にあるマスの正解の数字の総和を表している。例えば、そのヒントが属するマスが2個でヒント数字が2ならばその2マスはどちらも1しかありえないし、同じように2マスに対してヒント数字が3ならば一方が1でもう一方が2である。
普通のマスだけではなく追加ルールのあるものもいくつかあるが、ヒント数字と残りのマスの数、1・2・3の組み合わせで幅を狭めていくパズルであることに終始変わりはない。
それぞれのマスの選択肢は最大でもたったの三つと少なくパターンの幅が狭いため難易度の上限は低いものの、狭い選択肢といえども正解を確定させるには順を追ったメモと消去法の組み合わせによる丁寧な理詰めが必要である。
そもそもの選択肢が狭いという点で見た目のハードルを下げている分、一般的なペンシルパズルよりもさらにカジュアルなパズルだと言える。
しかしながら、この作品はルールの完成度に反して、パズルゲームとしては2点致命的な欠点を抱えている。
一つはヒント数字の設定の仕方が雑であることだ。使わずともクリア可能な無駄なヒント数字が存在したり、難易度に等しい規則性がなく、メモ要らずの簡単な問題から、ともすれば仮定法すらも引っ張り出されかねない難しい問題まで、その内容には規則性がない。
このパズルはルールの性質上、選択肢だけ数えれば (1,2) × (1,2) × (1,2) の8択に見えても、実際は (1,2,1) または (2,1,2) の2択に絞られるグループが頻繁に現れる。数独などでも使われる絞り込み方で、そこではこういったテクニックを要求される問題はまず難しい問題として扱われるが、この作品ではそうではない。
この作品には同じ盤面にヒント数字の数を変えた2種類の難易度を設けているが、同じ問題番号でもイージーのほうが難しいことすらある始末である。
そして、もう一つはメモ機能が不十分であることだ。
メモが重要な役割を果たすペンシルパズルでありながら、このゲームでメモを使えるのは一部の高難易度問題集だけで、しかもその内容は1、2、3、1/2、2/3、3/1と雑である。
前述の通り、このパズルはグループで単位でのメモすらも必要になるほど発展するのだが、それを丁寧に解くための環境はほとんど整えられていない。
どうせ選択肢が少ないのだから、詰まってしまったなら1マス適当に仮置きして解けばよかろうとでも思っているのではないだろうか?数字1個のメモなんかは明らかに仮置き用じゃないか。
仮定法は選択肢を確実に潰すための道理に適ったアプローチではあるが、私個人は確実であるがゆえに好きではない。解き方の幅を狭める思考停止の愚策だと思っている。
ルールは面白かったが、未整備の環境と雑なレベルデザインが残念なパズルだった。
一貫性もなく洗練もされていない乱雑な問題集は仮置き前提で組まれたパズルの成れの果てなのではないだろうか。