m-log
パズルゲーム感想アーカイブ

お弁当作りの日々によせて “inbento”

お弁当。無償の愛が具現化したもの。

見本?通りにおかずを詰めたお弁当を作るパズル。
弁当箱を空の盤面と見立ててそこにピースを当て嵌めていく。現実のお弁当作りと同じく、このパズルで考えるべきことは意外にも多い。おいしいお弁当を作るには、おかずの種類や数、位置の兼ね合いなどを総合的に考えなければならない。
最初のうちはまるでレシピの通りに作らされているかのような単調な問題ばかりだが、時が進むにつれて手間暇がかかるようになっていく。

おかずはいくらでも重ね放題、間違えたなら詰め替えだってし放題、あげくお弁当作りにはおおよそ似つかわしくない無機質なギミックピースも出てきたりとなんとも奇妙なお弁当作りだが、内外の融合をある程度割り切ったからだろうか、このパズルは見た目に反して深みがある。
このパズルはピースの形が不定で上書き可能というルールなので選択肢の幅が広く、逆算してピースを確定させるのが難しい。そこにさらにスライドや入れ替え、剥ぎ取りといった操作を加えることで、このパズルは一つを変えると複数が同時に変化するという、スライドパズルのような従属して動くものがある難しさを持つに至っている。

しかしながら、ストーリーとの連動なのか、歯応えのある問題は半分もなく、またやはり盤面のサイズを絞っていることもあってか、多少悩むことはあれどもすぐに終わってしまう。
とはいえ、盤面のサイズの小ささとピースの少なさを鑑みれば、このパズルが有している歯応えは十分すぎるほどである。

レベルデザインの奥深さがモチーフから乖離しているのが惜しくはあるが、ストーリーを始めとした作品の雰囲気も温かくて、解いていて心地のいいパズルだった。
同制作者による過去作 “Golf Peaks” があまりに簡単だったので、今作も同様なのではないかと予想していたのだが、いい意味で裏切られる結果となった。
どちらも小さな盤面と少ない手札のパズルで共通しているが、難易度や達成感で大きな開きが出た要因は間違いなくルールによる選択肢の幅の持たせ方だろう。

関連項目

Afterburn Puzzle Bundle収録作品