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パズルゲーム感想アーカイブ

ヒットマンの謀略 “Hitman GO”

“Hitman” とは、伝説の暗殺者・47として数々の暗殺ミッションに挑むステルスアクションである。
一番の魅力は暗殺の手段やアプローチに関して高い自由度を約束されていることにあるらしいのだが、パズルの奴隷たる愚鈍なマヌケは知る由もない。

Eidos Interactiveの名作を基に生まれた、Square Enix Montréal製パズル・GOシリーズの一つ。
この作品は “Hitman” をモチーフとしている。一歩進むごとに状況が変化する舞台を盤面として、主人公47を目的地まで辿り着かせるパズルである。

盤面の変化のトリガーをプレイヤーが操作できた “Lara Croft GO” とは異なり、今作では敵の向きや位置などのパラメータのほとんどがターンごとに一定周期で変化するという、ターン制のパズルとしてオーソドックスな作りとなっている。

しかしながら、レベルデザインの枠組を歩調合わせにしてしまっているためか、結果としてこのパズルは安全を確保できるまで反復横跳びによる足踏みをするだけという単調なものとなってしまっていた。
当然偶奇性があるので足踏みだけでは解決できない場面もあるが、裏を返せば偶奇をずらし自身の安全を確保するための手段があり、それに通じるためのルートがあるということでもあるので逆算も容易である。

このパズルは手数や敵の殲滅状況を縛る各種ミッションによって難易度を上げようとしたのだろうが、それでもなお足踏みするだけのゲームから脱しきれていない。それどころか、わざわざ寄り道をする必要があるので水増し感が強く、さらにはそのためだけに配置されるレベルデザインの本筋で全く意味を成さない敵の存在もあり、ますますこのパズルを単調にしている。
手数制限でようやく難しくなる問題もいくつかあるが、それでもほとんどは足踏みの回数を指し示すだけでしかない。

また、このパズルは他にも細かいが大事なルールにおいて欠点を抱えている。敵の索敵の仕様が詳らかであるとは言いがたいのだ。
敵の索敵の処理がどの順番に処理されるか、方向転換と索敵の切り替えのタイミングはどうなっているか、通常時とおびき寄せ状態とでどう挙動が変わるかなど、それらの詳しいルールについてはプレイヤーが経験則で理解するしかない。
見た目はわかりやすい形をしてはいるが、実は真に理解しようとするとややこしいパズルなのである。

とはいえ、こうも中途半端で単調なパズルとなってしまったのも致し方ないことなのかもしれない。この作品はSquare Enix Montréalによるモバイルデバイス向けゲームの第1号なのだ。
元となるシリーズ作品がスタート地点なので、パズルを作ろうとしてパズルを作ったわけではないだろう。どのように、いかにして落とし込むかの変形がまず先にあったに違いない。
この作品があったからこそ綺麗なレベルデザインのパズル “Lara Croft GO” ができたのだと考えると、この冒険によって地盤固めは成功していたと言える。

ちなみに、パズルの奴隷たるマヌケは当然Hitmanシリーズは未プレイなので、この作品がどれだけ元の作品のエッセンスを汲めているかどうかを推し量ることはできない。
私が感じたのは、暗殺者なのに足並み合わずに転かされてばかりだなんてアホみたいだなあってこれまたアホみたいな感想と、“Ave Maria” が妙に印象に残ったことだけだった。

関連項目

The GO Trilogy収録作品