デウスエクスの絡繰 “Deus Ex GO”
“Deus Ex” とは、人体の機械化を施されたとあるエージェントとして社会に渦巻く陰謀を暴いていくアクションRPGである。
幅広い選択肢とそれらを受け入れるナラティブなストーリーによる没入感が魅力らしいのだが、パズルの奴隷たる蒙昧なマヌケは知る由もない。
Eidos Interactiveの名作を基に生まれた、Square Enix Montréal製パズル・GOシリーズの一つ。
この作品は “Deus Ex” をモチーフとしている。一歩進むごとに状況が変化する舞台を盤面として、主人公をゴールまで辿り着かせるパズルである。
Hitman GOで土台を作り、Lara Croft GOで飛躍したGOシリーズの最も新しい作品だが、レベルデザインの作りは両者の中間といったところだろうか。忙しなく盤面が変化するHitman GOの要素と、自らが変化のトリガーを起動するLara Croft GOの要素とが半々で混在している。敵の躱し方に安全地帯での反復横跳びが多いという点ではHitman GO寄りといったところだろうか。
ただし、今作では敵の重なりを認めないため敵同士で干渉するという要素があり、完全な足踏みゲーというわけではない。敵をどこで詰まらせるか、そのために何をするかの過程でねじれを生んでいる。
しかしながら、実績を抜きにこのパズルを俯瞰すると、ギミックの整列による経路の暗示が目立つ。一見するとどうやっても通れなさそうな場所でも通り道を確保するための何かがあると考えれば、そのために何をするべきかは簡単に推理できてしまう。
Hitman GOで顕著だった欠点だが、この作品においても例外ではない。
基本的なレベルデザインに隙を残す代わりに、このパズルは手数制限によって埋め合わせを図っている。むしろ手数制限に合わせてレベルデザインを組んでいるようにすら思える。
適当に足踏みしながら安全になるのを待つのではなく、安全になるまでの過程で別の行動を組み込ませたり、結果的に手数を減らせるような回り道を探させたりなど、1手減らすのに一工夫を求めるような問題が多い。
その結果か、正解に全く関与しないダミールートや置物に等しい敵なども存在するようになり、やや泥臭いレベルデザインになっているものの、一定の達成感のある内容に仕上がっているのも確かである。
あるいは、レベルデザインはプレイヤーに委ねてしまっているだろうか。
今作にはレベルエディターと公開された問題を解く各種モードが用意されていて、これらを解いた分だけアンドゥを取得できるようになっている。報酬制のアンドゥとは全くもって意味不明なシステムだが、自分たちが作った問題に必死になるよりもコミュニティが盛り上がることを望んでいるのだとしたら、同意はできずとも理解はできなくもない。
私としては、Lara Croft GOの実績があるだけに、お仕着せのパズルだとしてもそっちのほうを作り込んでほしかった。コミュニティに優れた良問があるとしても、探すのは骨の折れる作業なので、あまり積極的になれるものでもない。