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パズルゲーム感想アーカイブ

アイスキャンディー争奪戦 “Lost Yeti”

レトロなファミコン風のグラフィックとサウンドが可愛らしいゲーム。
だが彩りの化粧を剥がせば、そこにあるのは意地の悪さだけである。

一定のルールに従い勝手に歩き回る主人公のイエティがゴールまで辿り着けるよう、盤面上の氷塊をスライドするパズル。
イエティの移動のルールは直進を基本として、角に差し当たるとそれに沿うように進行方向を90°回転させ、平らな壁に差し当たった場合は時計回りに方向転換する。
また、イエティを誘導させるための氷塊のスライドは特定のライン上でのみ可能で、操作できるタイミングはそのライン上にキャラクターが存在していない時に限られる。
盤面にはイエティの他にも敵となるキャラクター達がいて、種族によって独自の性質を持っているが、移動の基本的なルールはイエティと共通である。

このパズルは単にクリアする以外にも、盤面上にいくつかのアイスキャンディーが置かれていて、一度にどれだけ集められたかがゲームの実績となっているが、このアイスキャンディーは誘導を誤るとなんと敵に食べられてしまう。
ルールだけ見れば滑りをせき止めるものを操作するタイプの滑る床のパズルだが、イエティや敵がのんびり考えていられないほどの速足であること、忙しなく変化し続ける盤面への対処が必要なこと、アイスキャンディーの取得の模範解答の中には特に素早い操作を要求するものがあることなど、その内容はアクティブである。

だが少々アクティブ過ぎただろうか。このゲームはパズルとアクションが互いに足を引っ張り合っていて、結果として非常に苛立たせられるプレイ体験となってしまった。
このゲームでは盤面を映した状態で一時停止することができないため、ゆっくり考えることが全くできない。スライド中も盤面は変化し続けるため、ライン上にキャラクターが踏み込めば、パズルとしての意図を持ったスライドも、アクションとしての対処のためのスライドも邪魔される。キャラクターを閉じ込めてしまえばある程度は楽になるが、このパズルは両端が連続しているタイプのスライド方式なので、うっかり隔離が破れてしまえばまた振り出しからである。
ゆっくり考えられず試行すらも満足に通せないのに、アイスキャンディーを敵に奪われるというルールまであるのだから耐えがたい。もはや再現性も何もないいたずらなやり方で偶然が解決してくれるのを待つほうが早いという始末で、プレイ中に感じていたのはとにかく苦痛である。

一時停止などのゆっくり考えるための工夫があれば印象も変わっていたのかもしれないが、純粋なパズルとしても無視できない中途半端なデザインが色々と存在するので、それで面白くなるかというと微妙なところである。
例えば、イエティの移動のルールに説明やチュートリアルなどは一切なく、プレイヤーが推察するしかない。ぶつかる物や氷塊の色によって方向が変わるのではないかと誤解することから始まって、ようやく角と壁で区別されていると確信に至ったのは終盤である。
実は理解できたならマシなほうで、氷を吐く敵キャラクターの立ち止まるタイミングや氷を忌避するキャラクターの進行方向の優先順位など、中には結局最後まで理解できなかった仕様もある。

マヌケがクソゲーと感じた作品に多い、無計画に作られたアクティブなパズルの結果として、この作品もまたクソゲーの一覧に刻まれることとなった。