翅よ展け “SpellKeeper”
神秘の蝶よ、繭を破りどこへ行く?
迷えるパズルよ、ルールを重ねてどこを目指す?
魔力の源泉と繭に閉じ込められた蝶が配置された盤面で、源泉にセットすると一定範囲に魔力を流す “Spell” なる各種オブジェクトを配置していき、盤面上の全ての繭に同時に魔力を流し込み蝶を解放すればクリアとなる、手札管理を大枠としたパズル。
スペルの効果範囲は縦横4マス・斜め4マス・周囲8マス・縦横4方向のうちの直線1列と4種類だが、盤面のサイズが大きめで直線スペルがメインとなりやすいことから、その趣向には滑る床のパズルや一筆書きパズルなどの要素が表れている。
見た目は手軽そうだが、このパズルは存外に手強い。問題数はおつまみパズルと呼ぶならばあまりに少ない約60問だが、かかった時間で言えば凡庸なおつまみパズルの何倍もの密度になる。
このパズルはどの問題も盤面のサイズが大きく、さらに繭や源泉の配置をうまくずらしていて、安直な解答が通らないように工夫してある。あと一つのスペルが足りないという状況に何度陥っただろうか。たった一つのスペルを置き換え、たった1マスずらすだけで解けるのに、そのたったのいくつかに全く辿り着けずに遠回りさせられる。
中にはスペルが余ってしまう問題もあるので全ての問題が洗練されているわけではないし、盤面のサイズを大きく取ることがそもそもあまりスマートではないのだが、思考を自然と落とし穴へ誘導し閉じ込めるダミーの混ぜ方がうまいのは確かである。
しかしながら、このパズルもまたルールが増えるほど簡単になっていくジレンマに陥っていた。
60問はルールの追加によって4章に分けられているが、一番難しかったのは2章にあたるGardenであり、以降はルートを制限するルールばかりが追加されるためか、総じて手応えに欠けていた。
どこに置いても正解っぽく見えるがゆえにダミールートは強いので、これを明確に否定する材料が増えれば増えるほど簡単になっていくのは当然の帰結である。
制限のルールは一筆の趣向を強めたり、ライツアウトにまで発展したりと、中にはパズルの性質を根本から変えているものもあるので、難しくするならばダミーの置き方も含めて別のアプローチが必要になるだろう。
ところで、この作品はiOSでプレイする場合、ホームボタンがない機種については想定していないのだろうか?
ホームバーに重なる位置にスペル置き場を配置してしまっていて、操作でも情報の視認性でも思いっきり干渉してしまっている。
この作品の発売が2018年4月、初めてホームバーが現れたiPhone Xの発売が2017年11月なので想定できなかったのは仕方ないにしても、マヌケがプレイしたのは2020年6月と2年以上も経っているのに全く改善しなかったのは酷くないか?
解決策がないわけではないけど、Appleにはホームバーの仕様を変える気がなさそうだし、パズルに関係のないところで株を落とすくらいなら、さっさと対応したほうがいいのではないだろうか。