愛の形のヘビ “Love Engine”
五色の問題、私が解いた。
離れ離れの恋人達を引き合わせるパズル。その内容はヘビを操作する倉庫番ライクなパズルプラットフォームといったところか。
プレイヤーには操作キャラクターとして二つのハートが与えられる。ハートはそれぞれ始点が固定されていて指定の歩数を超えて移動することができないが、動ける範囲内ならば重力を無視して自由に伸び縮みすることができる。また、自身の軌跡が足場として残るという性質を持つ。
一方恋人達は一切の移動能力を持たず重力に従って落ちてしまうので、二つのハートで互いに足場を補い合いながら彼らを押していき隣接を目指すこととなる。
元来た道を辿り直すことで自由に足場を作り直せるので、ヘビパズルのように伸び切った後の対処に悩まされることはないが、代わりに倉庫番のような、どこからどこへどのように押すかに悩まされることとなる。
長さ制限がネックで、最大長は13と一見余裕があるように見えるが、安直な解き方をしようとするともう1歩が足りなくなってしまう。
このパズルでは複数の物体をまとめて押すことはできず壁となってしまうため、長さ制限を回避できるルートの模索に加えてブロックの処理をどうするかも考慮しなければならない。
だがこのパズルは問題数が少なすぎた。Christmas Sectionを合わせてもたったの全36問、そこから考えるまでもない簡単な問題を抜いてしまえばその半分にも満たない。
ようやく難しくなってきて面白くなり始めた時点で終わりを迎えるという、そのプレイ体験はまるで体験版のような印象だった。
その感じた難しさというのも、振り返ってみればハートに最大長があることと物体を複数同時に押せないことを突然同時に突きつけられた戸惑いによるものが大きく、わかってしまえば押し方はパターン化されてしまっていた。
ルールに可能性は感じられるものの、これが出せる全てとなってしまえば期待は難しい。
余談だが、この作品は中国生まれのインディーゲームで、七夕为背景的益智类单机小游戏
、つまり七夕をモチーフにした物語となっている。
日本では伝来の過程で他の行事と融合していった結果願い事を祈る日となっている七夕だが、本家中国では純粋に織姫と彦星のロマンスが語られ続けていて、年に一度だけの愛を捧げ合う日として、現在ではバレンタインデーのようになっている。
実際、ストアの説明文では愛をモチーフにした作品であることを強調していて、初リリースに2月14日を選ぶほどの徹底ぶりだが、しかしながら実際のプレイ体験にはあまり結びついているようには見えなかった。
愛を語る全く新しい作品にしようと頭を捻ったのだろうが、ゲームのプレイ体験と物語の展開の連動が難しいレガシーなパズルに収まってしまった結果、ストーリーはありがちな添え物程度の紙芝居になってしまっていた。
個人的にはストーリー以上にパズルの外面のデザインが悪かったことのほうが気になっている。七夕をモチーフにしたパズルということならばつまりハートは天の川に橋を架けるカササギということなのだろうが、ただのハートでは何のことだかさっぱりである。足場のキラキラは見づらいし、残り歩数はわからないし、どっちのハートがどっちの操作と連動しているのがわかりにくいし、引き合う二人が恋人のようには見えないし、パズルを説明するデザインとしても、テーマを語るデザインとしてもうまく溶け込んでいるようには見えなかった。
作りたいゲームと語りたいテーマのどちらの優先度が高かったのかはわからないが、結果として中途半端になってしまったのは残念なことである。