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パズルゲーム感想アーカイブ

生き残りを懸けた橋梁建築 “Bridge Constructor: The Walking Dead”

無資格建築士の次の勤務地はゾンビで溢れかえる街だった。
部材で殴ったほうが早い終末の世界へようこそ。

橋架け物理演算パズル “Bridge Constructor” が海外ドラマ “The Walking Dead” とコラボレーション。
Bridge Constructorシリーズは過去に “Portal” とコラボした “Bridge Constructor Portal” を出していて、それまでのシリーズ作品のエッセンスを汲みつつ新しい橋架けパズルの形を提示していたが、今作もまた別の形の新しい橋架け物理演算パズルとなっている。
ちなみに、マヌケは元ネタについてさっぱり知らないため、ドラマをゲームに昇華するという異なるメディア間での再解釈に関して言及できないことを先に断っておく。

今作のクリア条件は車両をゴールまで渡すことだけではなく、その内容は問題によって様々である。もちろん今までのような車両の通行を想定した静的な橋架けもあるが、ゾンビの殺害、生き残りの安全および経路確保など、Stuntsから連なる2次元的橋架けをMedievalの趣向を強めに拡張したといったところだろうか。
また、今作の特徴として橋の建設以外にも主要キャラクター達の行動を制御する簡易的なストラテジー機能があり、ゾンビをおびきよせるデコイを投げる、ハンドグレネードを投げる、遠距離狙撃するなど、各キャラクターが持つ固有の能力を適切に使用していくことも求められる。

シリーズお馴染みの安定した建築とBC Portalで確立された動線の構想に、キャラクターのコマンドプログラミングを混ぜ込んで独自のパズルへと仕上がった今作だが、それはそれで楽しかったといえど、とうとう本質が橋架け積み木遊びからジャンプ台・ギミック作りにシフトしてしまったという嘆きのほうが大きかった。
建築だけを見ても自重とモーメントを利用して傾かせるギミックや判定の差を利用して背景に引っ掛けさせたりなど当たり前のように要求するようになってくると、いよいよ “Bridge Constructor” の定義が怪しくなってくる。
今作の設計はケーブルの強度が従来のように強力なものに戻って堅固な建築が造りやすくなったが、グリッドが荒くなってしまって綺麗な設計は実現しにくく、まるでシステムの側からも綺麗で静的な橋架けを求めていない旨を訴えられているかのようである。

また、今作のレベルデザインは固く柔軟性に欠けていて、設計があまり楽しくなかった。例えばタイミングの見計らいを要求される割に調整の権限がなく環境に合わせるしかなかったり、設計可能な場所の制限が多かったりなど、自身の手で活路を開くというよりは、与えられた条件の中で可能な手を模索させるような作りが目立つ。
そのせいだろうか、新たに導入したせっかくのストラテジーも組み合わせの選択肢に乏しいせいで実質的に点つなぎとなってしまっていた。リソース配分と動線を考えるよりもまず確定させるべき組み合わせから逆算して動線が決まってしまうため、解答のアプローチはそれに従って通路を設計するという作業になってしまっていた。
全体的に、解き方を考えるよりも微調整に悩まされる時間が圧倒的に長かったように思う。

実は過去に橋架け業務全般をサボタージュしていた影響をこのパズルも受けていて、その結果購入からクリアまでだいぶ間が空いてしまった。やる気をなくすようなデバフがマヌケに掛かっていたとはいえ、これはつまり、今作は積ませてしまうような面倒な作業を含み、かつ別の魅力に欠けやる気を起こしにくいパズルであるということでもある。
“Bridge Constructor” の名を冠している以上基本は忘れないでいてほしいのだが、このシリーズの明日ははたしてどうなるのだろう。

関連項目

Bridge Constructorシリーズ作品