冥途の一本道 “私たちのさいごの旅”
いとしい人がこの世を去って、四十九日はおろか初七日すらも経ってない3日後の朝。現実なら葬儀の前後でバタバタしている頃だろうに。
おそらく大して考えてないのだろう。
天国に旅立ったおじいちゃんの気配を追いかけてふしぎな空の島を巡っていく、2.5Dの倉庫番ライクなパズル。
倉庫番におけるデッドエンドの壁がない代わりに、ブロック1個分の高さの穴で囲うという形で盤面を構成している。
おばあちゃんは老齢ながらもパワフルで、道を塞ぐブロックは何個縦に重なっていようとまとめて押していく。おかしなことに、彼女はブロックが横に並ぶと途端に押せなくなってしまうのだが、高さのある2.5Dパズルとして、Z軸方向に積み上げさせる制約とXY平面上の移動の制約とを両立させた形だろう。
さいごの旅に手数や時間を数える閻魔様はいないので、何者にも心脅かされることなくゆっくり楽しむことができる。
しかしながら、押すまで対応関係がわからないスイッチを基本に展開したレベルデザインが多く、そのくせ考えるまでもない簡単な問題ばかりなため、考えるよりも確かめる時間のほうが圧倒的に長いという単調かつ退屈なパズルだった。とりあえず道の続く通りにブロックを押しているうちに勝手に解けてしまったりなど、中には解決すべき事柄の存在すらも危うい問題もある。
全45問を解くのに1時間弱、ちょっとした郊外への遠出にすら届かないさいごの旅の、このうちの何割の時間を思考に割いただろうか?
それにしても、死に際の老体に足止めにもならない倉庫番をさせる意味は何だったのだろうか。
おそらく大して考えてないのだろう。
ネタバレ項目: 三途の川辺にて
おばあちゃんの本当のさいごの旅が始まるのはChapter 5からで、おじいちゃんの没後3日後に始まった旅はChapter 4終了後に現世へと帰るよう言われてしまう。
その時、ふとマヌケに一つの疑問が浮かんだ。彼女は一体どうやって現世まで帰るのだろうか?それまでに解いた問題のいくつかにどうあがいても後戻りができなくなるものが含まれていたはずなのだが。
おそらく大して考えてないのだろう。
余談だが、同制作者は過去に同じデザインのおばあちゃんを主役としたゲームをいくつか出している。
中には全く同じボクセルアートデザインのおばあちゃんが主人公となったゲームもある。
「私たちのさいごの旅」はこの約1年半後、2017年11月14日にリリースされた作品だが、つまりこれでおばあちゃんが主役のシリーズはおしまいだということなのだろうか。
……と思ったが、その後のパーティゲームにおじいちゃん共々しれっと参戦していたりする。
おそらく大して考えてないのだろう。
スターシステムを悪用したようないい加減な理由で殺されていないことを祈る。