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パズルゲーム感想アーカイブ

予定調和の磁場 “Magnibox”

あらゆるものをずらしたところで、全てが一列に揃うのならば意味がない。

コロコロと回りながら移動するU字磁石が主人公のパズルプラットフォーム。
磁石は磁力を帯びた物体に対して引き寄せや引き離しを行うことができるが、操作を行えるのは磁石の先が対象のほうを向いている状態に限られる。色が逆のように思えるが、+に対して引き寄せられ、-に対して反発する。磁石は1マス移動するごとに移動方向に応じて90°回転するので、対象の物体と自身の向きとが揃うように立ち回らなけらばならない。
重力を克服する選択肢に磁力を選べるが、代償として常に変化するパラメータの調整を考慮しなければならないというその内容はユニークである。

かなりの数のギミックがあり、レベルデザインも一見すると複雑そうに見えるが、しかしながらその内容は概ね単純で手応えはなかった。全体を俯瞰する必要もなく、目の前に転がっている使えそうなものを片っ端から使っているうちにほとんどの問題が勝手に解けてしまう。
このパズルは磁力をはじめとしてパラメータの調整にブロックの運搬など、要素だけを挙げればねじれたパズルにはお馴染みのものが盛りだくさんだが、このパズルのレベルデザインはそれぞれが干渉するように並べられていないので、何か一つが揃えば残りのものが勝手に揃ってしまうのである。特に酷いのが移動の周期で、合うギミック合わないギミックをなぞっていくと順路を指し示してしまう。
クリアに関わらないダミーのギミックを混ぜることで目眩しをしているが、全体を考えるまでもない作りが祟ってほとんどは何の役にも立っていない。
唯一パズルを複雑にしているのがブロックの運搬で、運搬方法と運搬先とで思考を求めるように組み込まれていた。余計な順路の提示がなければ、もしかすると歯応えのあるパズルになっていたかもしれない。

テーマが完全に足を引っ張ってしまっていた残念なパズルだった。
目的意識もないまま勝手に解けてしまうパズルのなんと虚しいものか……。