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パズルゲーム感想アーカイブ

名状しがたきインフラ整備事業 “Mars Power Industries”

この作品の舞台である火星?は『2001年宇宙の旅』にインスパイアされたものらしい。教養のないマヌケはその元ネタの映画についてさっぱり知らないのだけど、それもまたイチゴの上に送電塔を建てるような珍妙な世界だったりするのだろうか?

電気の湧き出る場所に送電塔を設置し、全ての施設が満足に電気を使えるよう電力網を完成させるパズル。
送電塔が設置できるのはエネルギー資源の湧き出る場所に限定されていて、さらに送電塔は手順ごとに使える種類が決まっているので、目的の施設までのインフラ整備を終えるには堅実な一歩ずつの開拓が必要となる。

このパズルは引くべきエネルギー資源として石油?が追加されたり、トゲや送電禁止エリアなどマスにギミックが設定されるようになったり、行や列をスライドさせる装置が出たりとルールは豊富になっていくのだが、終始簡単なものでクリアまで2時間もかからなかった。あえて難しかった要素を挙げるならば行列スライドモジュールがもたらしたスライドパズルの難しさだが、開拓の経路の引き方や送電塔の接地箇所といったリソース管理の難しさは一切なかった。
こうも簡単になってしまった理由として、盤面の最大サイズが5×4と小さく、かつ手数も最大で5と少ないためそもそも難易度が抑えられているというのもあるが、それ以上に二つのルールがこのパズルを簡単にしていたように思われる。
一つは送電塔が置ける場所の制限という基本的なルールであり、これよってただでさえ少ない選択肢がさらに狭まってしまっていた。
そしてもう一つは上書きのルールである。あるマスに対して異なるエネルギーが流れるように塔を設置するとマスのエネルギーは上書きされてしまうが、既に必要なエネルギーを流し終えた施設に対してはこのルールは無効なため、最終的なエネルギーの干渉を考える必要がないのである。
さらに言うならば、エネルギーを流す塔の位置がスライドによって変わってしまっても、あくまでもスライドするのはその行または列だけなので、スタート地点から連続した力の流れが必要なわけではないというのもあるだろう。
クリア条件の設定の仕方がプレイヤーを甘やかしていると言うべきだろうか。盤面が小さくても難しいパズルは存在するが、以上のような易化要素を抱えているこのルールでそういったミニマルな難問を作るのは難しいだろう。

このパズルは問題数が少ないが、チュートリアル問題に加えてさらにストーリー上の演出のために割いた問題もあるので、実質的なパズルの問題数は見かけ以上に少ない。
そうしてパズルを犠牲にしてまで表現しようとしたことが何なのかはマヌケにはまるでさっぱりわからなかった。惑星開拓が進もうとも、謎のイチゴを収穫しようとも、名状しがたきものに侵されようとも、自然な納得に結びつく常識的な繋がりを見出せるような展開が観測できることはなかった。
とりあえずマヌケが思ったのは、こんな意味不明な星には絶対に住みたくないという単純な感想だった。

追記

知らない間に実績やら追加要素やらが搭載されていたのだが、クリア済みのせいかその説明すらなかったので、どこに何が足されているのかを知るのに一苦労した。
ストーリーといい言葉で語らない表現が好きなのかもしれないが、せめて誘導くらいはしてほしかった。
このパズルで一番難しいのはパズルの中身ではなく差分探しなのではないだろうか。

追記

新しいギミックやルールが導入された問題集が追加され1.5倍のボリュームとなったものの、結局簡単であることには変わりなかった。新しく追加された問題を全て解き終わるのになんと1時間もかかっていない。
同じく簡単とはいえど隣接したフィールドを全回収してしまう建物のルールは面白かった。散らかったものが綺麗に片付いていく様を眺めるのは気持ちがいい。
ルールに根本的な弱点が存在する以上パズルとしての奥深さを追求するのが難しいのならば、いっそのこと見た目の面白さや爽快感を突き詰めるよう舵を切るというのも一つの手なのだろう。