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パズルゲーム感想アーカイブ

即興交通局 “Mini Metro”

今日の新線は明日の廃線。
鉄不足をよそに人は、街は増えていく。

一つの都市を舞台に、街と街を繋ぐ鉄道路線を敷いていくゲーム。
開始直後の都市の規模は小さいが、時間経過で発展していき街の数や種類、人口が増えていく。乗客をうまく捌けず駅に残してしまうとストレスゲージが溜まり、一箇所でもゲージが満タンになってしまうとゲームオーバーである。
ゲーム内時間で1週間経つごとに設備の強化が行えるが、都市の発展のスピードはそれ以上に早いので経営はいずれ破綻してしまう。それまでに運んだ乗客の数を競うスコアアタックが主題のゲームである。線路の敷き方や各路線に配置する車両数のバランスなどを工夫し効率的な路線図を描くことでハイスコアを目指すこととなる。

人口の増えやすさや街の生まれやすさで地域別に偏りがあるので、ある程度は計画的にプレイすることはできるが、それでも後の状況まで読んでいくのは難しい。
乱数の絡み合いが動的に連鎖していく反面、取れる静的な手段に乏しく同様に動的に反応せざるを得ないこのゲームは、パズルではなくローグライクの純粋なストラテジーである。
また、オリジナルの路線を運用するシミュレーションを期待したくもなるが、街は区別のある地名ではなく区別のない種類で分類されるので、代替可能な街に運べればそれで乗客の要望が満たされるこのゲームに鉄道経営のシミュレーションらしさは薄い。

このゲームを初めてプレイしたのは2017年の5月末と4年も前のことだが、スコアアタックに関心のないマヌケはパズルではないこのゲームを積むでもなく完全に放棄してしまっていた。
そんな中、再度プレイする気になったのはiOSのアップデートに伴うGame Centerの仕様変更の影響である。取得実績が一覧化されるようになって、中途半端に投げたこのゲームが一覧の中で浮いてしまっていたので、全実績解除までプレイすることにした。

リーダーボード入りを目指すプレイでは運を味方につけることを前提とした精緻な戦略が求められるのだろうが、全実績解除程度ならば何も考えずとも詰まりそうな駅から臨時路線を引くだけの作業でしかなかった。ルールの関係で環状線が強力なため路線図も環状線を重ねただけのパターンに収束してしまうのも単調さを助長している。
都市の数は無駄に多いがやることはどこも同じで、最低限必要なトンネルの数が変わる程度の違いしかない。現実の都市をモチーフにしていても現実とのリンクが薄ければそこに面白みはない。例えば、日本モチーフのステージとして大阪が登場しているが、府内を新幹線が環状線で走る絵面は珍妙なだけしかなかった。

改めてやり直した上での感想だったが、おそらく昔と大きく変わってはいないだろう。嗜好はそう簡単には変わらないらしい。
勝手に生える駅と客に振り回されるスコアアタックを楽しめるわけもなく、昔のマヌケが投げたのも納得である。

追記

10周年記念の大型アップデートとのことだが、今日に至るまでに都市追加のアップデートは何回もあり、都市のラインナップも随分賑やかになったものだ。
都市が追加される度に実績解放までプレイしているが、都市に個性を出そうとする試みは理解できるものの、やはり数ばかりいたずらに増やしてもどうしようもないのではないかという感想は変わりない。
だが、世界各地の都市の数々は10年の重みを語るに十分である。幅広く愛され続けてきたからこそ今があるのだろう。