ガイドなき回想の旅 “Old Man's Journey”
私はその人のことを知らない。私はその人の旅路を知らない。
なのにその人を導けという。私は何も知らないのに。
一通の手紙を受け取ったことを皮切りに、旅に出たおじいちゃん。その道すがら、見た景色や経験したことを通じて彼の記憶を回顧するゲーム。
ストーリーに力を入れているのか、ゲームとしての複雑さは面白さも含めほとんど削ぎ落されている。
ゲームの内容は地表という名の曲線を操作しておじいちゃんをゴールまで導くことである。おじいちゃんが立っている地面を除き、目に映る大地は隆起させたり沈下させることができる。地表面は常に曲線化されていて、交点が存在するならばおじいちゃんは大地をまたいで移動することができる。
この仕組みを利用して先を目指すのだが、これはパズルでもなんでもなくただの点つなぎでしかない。途中で羊をどかしたり、城壁を壊したりするような謎解きじみた仕掛けが出てくることもあるものの、道を繋げるというそもそものゲーム内容自体はパズルではない。
おじいちゃんの立っている地面を操作不可能にするのはパズルとなるためのルールになってはいるのだが、それを利用しての思考を要求する場面はなく、ただただ操作の邪魔にしかなっていない。大地を操作するためにわざわざおじいちゃんを退避させなければならないという手間しか生んでいないのだ。
それだけならばパズルを自称したスカスカなゲームで終わるところだが、この作品に対するマヌケの心証はそれ以上に最悪である。
というのもこのゲーム、とにかく説明不足が目立つのである。まず旅立ちからして何をすればいいのかわからないし、大地の操作に関する説明すらない始末である。
どこがゴールなのかもわからないし、大地も具体的にどれだけ変形させられるのかについては自分でいじって上限下限を確認する他ない。場所によっては線の繋がっていない別の大地におじいちゃんを強制移動させる地形ギミックがあるが、そのことに関する説明もない。
また、おじいちゃんは足が遅い、大地の操作中は足が止まるなどとにかくテンポが悪い。そしてこのテンポの悪さは目的地を示さないシステムと最悪の形で噛み合ってしまっている。どこを目指せばいいのかわからずあちこちのろのろうろうろさせられイライラ、大地を操作するためにおじいちゃんを退避しなければならないがその移動が遅くてイライラ、と終始苛立ちっぱなしの旅が続く。
2時間程度で終わるほどには短く簡単な内容だが、その短い時間で感じたストレスはかなりのものである。内容がスカスカなものだからせめてさっさと終わらせたいが、その気持ちに反して終わりに辿り着くには無駄な足踏みが必要というのはせっかちなマヌケにはつらいものだった。
力を入れたであろう肝心のストーリーも別によくある話だと思う。よくある話ゆえに無事にハッピーエンドというのがご都合主義でくだらないとすら思ってしまった。
マヌケとしては作中で語られなかった側のストーリーのほうが気になった。ただの回顧よりも受容の過程が物語として興味深い。