漂泳空間の生存競争 “Osmos”
適者生存?いや違う、ただ運がよかっただけだ。
弱肉強食を体現した浮遊生物のうちの1匹を操作して、指定の条件を満たせばクリアとなるゲーム。
浮遊生物は自分よりも小さい相手にぶつかると触れた分だけ相手を吸収するが、逆に言えば自分よりも大きな相手にぶつかってしまうとその分自分が吸収されて小さくなってしまう。
プレイヤー、すなわち操作キャラクターとなる浮遊生物ができることは自分の一部を放出することだけであり、この反作用による慣性に従い漂うように移動する。放てば放つだけ自分も小さくなっていくが、その分だけ速度も上がる。またこの操作は自分の推進力にする以外にも、相手にぶつけることで動かしたり、進路を変えさせることもできる。
クリアの条件は様々あるが、大抵の場合は他の生物が束になっても敵わないサイズにまで大きくなることが条件となる。どのステージでも閉じた空間に限られた量の生物しかばら撒かれないので、肥大化した一個体が出るとどうあがいても勝てなくなる。なのでそれを阻止するか、あるいは誰よりも早く大きくなるための戦略が求められる。
リソースは有限で、移動には強弱を決定する自分の身を削らなくてはならない。どこをどのように通り、誰を吸うべきか?その内容はリソースを奪い合うストラテジーであると言える。
そして浮遊生物は急には止まれないので、常に先を読みながらの操作が求められる。その内容はアクションであるとも言える。
ただし、パズルであるかどうかは問題集によって大きく隔たっている。
問題集はそれぞれテーマが違っていて、対処のアプローチも全く変わってくるのだが、パズルと呼べるほどの戦略が必要となるのは大小様々な浮遊生物が密に詰まった盤面で成長を目指すImpasse問題集だけで、残りの問題集は概ね初期配置と初動で手早く大きくなるのが正着となっていて、戦略の幅はほとんどない。
ならばリソースを奪い合うアクションとして面白いかというとそうでもなかった。
自分が慣性を支配できるうちは楽しいのだが、慣性系が導入されるようになると途端に慣性に抗うのが難しくなる。さらに難易度調整として慣性に抗うためのリソースをより少なく、盤面のサイズをより広くするという手法を取っているため、最終的に無駄な行動を一切せずに時が舞台を整えるのを待つしかなくなってくる。特にEpicycles問題集はそれだけでもクソゲーと呼べるほどの酷さで、都合のいい状況を待った上でさらに周回軌道に捕まるのを祈る運ゲーと化していた。
ちなみに唯一のパズルことImpasse問題集だが、これだけでもやる価値があると思えるほど面白いパズルだった。小さいほど対抗手段がなくなるという自然界の掟を逆手に取ったうまい枠組であり、小さな個体から大きく育つという絵面も合わせて達成感は十分である。
だからこそ他の問題集がつまらないのが余計に残念でならない。
同じルールでも匙加減一つで両極端なゲームと化すというのはよくある話ではあるけど、ここまで差が開くものなのか……。