求めよ、さらずば与えられぬ “Pavilion”
自称 “Fourth-Person Puzzler”。
定義がよくわからないけど、キャラクターを直接操作せずにステージ上のオブジェクトを操作することでキャラクターに影響を与えて間接的に動かすシステムのことを指すのだとしたら、それは別に珍しいものでもないだろう。
何かに駆られたかのように走るおっさんを誘導するパズル。この作品では彼を操作することはおろか、ルートの指定などおっさんの意思決定に関する指示を直接出すことすらできない。プレイヤーができるのは電灯を点けたり消したり、鐘を鳴らしたりなどステージ上に存在するオブジェクトを操作することだけである。
おっさんの行動を直接支配できるわけではないが、彼は道が続く限りゴールに向かって走ってくれるし、途切れた道を前にした場合の意思決定のパターンや行動の習性などが決まっているので、プレイヤーはそれらを理解し利用しながら遠回しに誘導していくことになる。例えば彼は暗闇を極度に嫌うので、通したくない道に電灯があるなら消しておけば彼を通さないし、舞台は寒いのか、道が塞がっているとたき火に吸い寄せられる性質があるので、これを誘導の起点とできる。
嵐が吹き荒ぶ広大な廃墟という美麗なアートワークのせいか、はたまたパズルの内容が実際にやってみないとわかりにくいせいか、見た目には全くその気が見えなかったが、この作品は実際にプレイしてみると実はかなりのクソゲーだった。
レベルデザインが酷いだけでなく、システムやルールといった基本的なことすらもパズルゲームとして最低限押さえるべきポイントをことごとく外していて、とにかくストレスが溜まるのである。
おっさんの誘導は彼の行動原理を理解して初めて可能になることだが、一つ一つの習性を理解するのは簡単でも、その優先順位については曖昧である。道が塞がった状態でおっさんが引き寄せられる鐘を鳴らすと、引き寄せられたり無視してたき火にあたり続けたりと、相反する二つの条件が揃った時にどちらを優先するのか、その行動に一貫性はない。
彼はゴールまで自動で走るとはいえ、具体的なルートの選定基準は通ってもらうまでわからない。おそらく障害物を無視した場合の最短経路を走るのだろうが、複数の経路がある場合など一目で最短距離がわからないことがあると、思い通りの誘導がうまくいかずに苛々させられる。
そして、現代風のマンションを舞台にしたステージではそのオート移動すらも放棄するので、置かれた状況もクリア条件も何がなんだかさっぱりわからないまま放り出されてしまう。
このようにそもそもわかりにくく扱いづらい基本ルールであるにもかかわらず、特に時限要素のあるパズルの猶予が短いなど無駄に精度を求めてくる。
謎解きそのものは考えるよりも観察に重きを置いているので、その出来はともかくとして難易度自体は低いが、それを快適に実現させられる環境は整っていないので無駄に苦労させられる羽目になる。
そしてこのパズルの一番の欠点は、正解の行動をしているにもかかわらずそれが反応しない場合があることだ。
このパズルは解答に対して正解か否かをおっさんの行動によって返すが、オブジェクトが反応しない、おっさんが行動しないなど、判定役が機能しないことがある。
これに加えて前述の行動の優先順位のわかりにくさや無駄に高い精度の要求などが合わさることで、このパズルでは考え方は正しくても先に進めないという状況が少なくない頻度で起きるのである。
少しのずれで仕掛けが起動しない、おっさんのルートが変わる、見つかるものが見つからないなど、正解への道が濁ることによるストレスは単なる操作性の悪さがもたらすものとは比較にならない。
実はこの作品はなんと未完で、物語は第一章: 完で幕を閉じる。相応に短い作品ではあるのだが、その短いプレイ時間に反して感じた疲労はかなりのものである。これ以上の苦痛は味わいたくないので、永遠に未完のままで、できれば第二章以降の一切が来ないでほしい。