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パズルゲーム感想アーカイブ

舞台裏の交換難 “Perspecto”

もどかしさと手軽さが交互にやって来る奇妙なおつまみパズル。量が少なめだから満足感は薄いけど、それ以上に無意識下の進行速度による喪失感のほうが強かった。そんなつもりは全くなかったのに、気づいたら最後の1個を食べてしまっていたかのような……。

Perspecto Screenshot

トレーラーが見つからなかったため画像に差し替え。
立方体のブロックが寄り集まったn³の空間の1面を見下ろしている状態で、見下ろす面を縦に横に切り替えたり、ブロックを入れ替えたり移動させたりすることで目標の2D絵に揃えるパズル。
形状と色は当然のことながら向きも一致させる必要もあるが、どの列で揃えるべきかの指定はない。
見た目は3Dだが各面での操作が互いに影響し合うというだけで、実際に操作するのは2Dであり、総合するならばせいぜい2.5Dパズルといったところ。画像では取り扱うものが3D空間であることを強調するために回転途中を切り取ったが、実際のプレイで3D物体の厳密な合わせ作業が必要となることは全くない。

ブロックの移動はブロックに付与されたマークによって様々あるが、マーク付きのブロックは隣接していれば互いに位置を入れ替えることができること、移動先に選べるのは現在見下ろしている状態で色付いていない空きマス、つまり全ての段に一切のブロックが存在しない列に対してだけということ、勝手に属する段を変えることなく同じ段上を移動することが共通している。

ブロックを交換させるためにはどの向きでどのブロックを経由させるかを考えなければならない。
また移動可能なブロックは1歩動かすためにはその列をまとめて空けておかなければならないが、そう簡単にことが運ぶわけでもない。しかも動かすべきブロックは1個だけとは限らず、それらが互いの道を塞ぎ邪魔し合うこともある。
目当ての絵に揃えればいいだけなので、見えない範囲はどんなに散らかっていても構わないのだが、このパズルは見えない範囲で自由に動かしていくパズルから、次第に見えない範囲に押し込めていくパズルとなる。
ただ、このパズルにおける難易度の上げ方は直接交換するのが難しそうな位置をブロックの運搬目的地に指定するという一択だけで、それだけでも十分に難しくできてはいるが単調でもある。簡単な問題と難しい問題の並べ方やブロックのマークに追加を入れるペースでテンポを保っているので一応つまらなくはないのだが、考えるべきことに変化がないというのはあまり好ましくない。

だがこのパズルはレベルデザインの如何以上に、直感と理屈が混ざり合わずにしばしば対立することに対して、ストレス……というほどでもないが、常に違和感と隣り合わせだったことが気になった。
このパズルは難しくする要素に常識とのずれを用いている。操作する空間は3Dだが、移動範囲を決めるのは3Dではなく2Dである。その直感に反した移動範囲の狭さによって、マヌケはしばしばブロックの移動を間違えてしまった。
冷静に順を追って考えていけば解けはするのだが、冷静になる前でもクリア一歩手前まで持っていけてしまう手軽さがあるのも事実である。
思うように解けないもどかしさという意味では盤面のサイズの小ささに反して間違いなく歯応えはあるのだが、それが面白さや達成感として印象に残ったかというと疑問が残る。

直感を混乱させるパズルというものは色々やってきたけど、やはりこの手のものはあまり好きではない。おつまみパズルの面構えをしていたらなおさらである。
たとえ難しさに振り切ったとしても、その源泉が常識とのずれなのだとしたら、やはりその思考の癖の擦り合わせをするストレスのほうが上回りそうな気がする。