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パズルゲーム感想アーカイブ

土地争論和解案 “Puzzle Pelago”

譲り合いのない都市計画のなんと醜いものか……。

島の住民が望む物をそれぞれ生産できるよう、道路を敷くことでサプライチェーンを繋いでいくパズル。
街づくりシミュレーションをモチーフとした一筆書きパズルといった具合である。

島には資源となるマスがいくつか存在し、そこから道路を敷くと順に生産・加工の施設が設置されていく。例えば、山からは原木を伐採でき、原木は木材に加工できる。
他にも隣接の条件を見たすことで、他の資源と組み合わせた物を製造できる施設もある。一筆書きパズルということで、陸橋を除いて道路の交差は認められない。サプライチェーンを完成させるためには、狭い島内の少ない土地を無駄なく捌けるように施設を配置していく必要がある。

一般的に一筆書きパズルは簡単になりやすい傾向があり、このパズルも一筆書きパズルに由来する一筆書きそのものの選択肢の狭さや、隣接関係に制限をかけるルールに由来する順路の暗示などもあり、簡単な問題のほうが割合としては多い。
だが、このパズルのレベルデザインはねじれが綺麗に作られていて、エレガントに仕上げられた良問が多かった。中には非常に歯応えのある難問もある。
経由地で選択肢に幅を持たせているのがこのパズルの面白いところで、始点と終点の組み合わせだけでなく、何をどこで経由させるかも考えなければならないのが解決すべき事柄の層を生み出している。
そして、このパズルを良問へと昇華させているのが極限まで余白を削り取られたレベルデザインにある。見かけの選択肢は多く見えても、正解として実現可能なものは狭路によって狭められている。
隣接関係の指定は順路の暗示になるが、錯覚として働けばそれは途端に思考の落とし穴になる。一筆書きパズルだからこそ有効に働くトリックだ。
この素晴らしい噛み合いの数々がこのパズルをよりエレガントに仕立てている。

ただ、このパズルはパズルとして面白くなればなるほど、モチーフである街づくりシミュレーションの美しさと噛み合わなくなっていくのが気になった。
近所に目当ての施設が建っているのに、道路を共用できないがゆえにずっと遠くの施設から、しかも遠回りで道路を引き込むしかないとはなんと世知辛いことか。交差点の実現が陸橋とはなんと愚かなことか。他所宅の者が自分所有の道を通ることがそんなに許せないことだというのか?
島民たちの一歩も譲らぬ我田引水の根性には笑いすら込み上げるほどだ。

内面と外面の乖離はあまり望ましくないことだろうが、それゆえに生まれる笑いもあるし、なによりパズルの素晴らしさは微塵も揺らがない。
なんともアホな和解案だとしても、島民全員の要求を等しく叶えた結果なのだから文句はあるまい。花火すら上げているのだから、当人たちもそれでいいのだろう。