小気味よさと手応えのなさの彼岸 “quadline”
一寸先は堂々巡りの落とし穴。
その穴は意図して掘ったのか、それとも偶然空いたのか?
正方形の形のセルに沿って各辺がまとめて動くスライドパズル。太い線で表される全てのパーツを指定の位置に同時にセットすることでクリアとなる。
パーツの移動はコマンドが埋め込まれたセルを操作することで行う。基本的な移動は回転と平行移動の2種類で、回転はセルの各辺を90°指定の方向に回し、平行移動はセルの同行または同列にある辺を指定の方向に1マス分ずらす。
大枠はわかりやすく従属のスライドパズルではあるが、盤面のサイズは小さく余白が広い、とパーツ同士の連動を切ることがたやすいので、まとめて動くスライドパズルらしい従属のもどかしさは弱い。
このパズルの主軸はスライドの性質によるものではなく、スライドの操作そのものによる制限のほうだろう。セルにコマンドが埋め込まれていない限りパーツを操作することができないので、いかにして限られたコマンドでパーツを動かすかという枠組のほうが目立ってくるようになる。
パズルに変化とより強い制限を与えるべくギミックも様々用意されているが、特に回転操作を受け付けないパーツの存在がアクセントになっていて、このパズルでは弱い従属のもどかしさを自由に運べないもどかしさへと置き換えている。
しかしながら、やはり余白の広さの影響か全くといっていいほど手応えがなかった。
軽快な操作とゲームのテンポによる小気味よさは確かなので、おつまみパズルのような考えやすいパズルという見方もできるだろうが、本当にテンポを重視しているのならば従属のスライドパズルは取り合わせが悪いように思える。
テンポよく解けるようにか、レベルデザインは手数が少なく済むよう崩したかのようなものが目立つが、基本が従属のスライドパズルという性質上、1手を間違えると正解までが一気に遠くなるというケースは多い。アンドゥがあるので気づければ戻るのは簡単だが、間違えたと気づけなければテンポのよさからはほど遠い堂々巡りをすることになる。
パネルの分だけギミックがありルールがあるので単調ではないものの、サクサク解ける爽快感に欠け手応えにも欠けるという中途半端な印象が残ってしまった。
個人的に一番の欠点はシステムのUIのわかりにくさである。
パズルのUIは言葉いらずのシンプルなデザインだが、触ってルールを確認する過程とパズルの不文律のおかげで理解できるだけで、素でそれほどわかりやすいとも思えない。特にそれが顕著なのが設定のアイコン群であり、一目で意味を伝えるわかりやすいデザインからはほど遠い。


(右) 左上: BGMスイッチ 中央上: SEスイッチ 右上: 詳細設定を閉じる 左下: iCloud同期スイッチ 中央左下: 画面を下げる 中央右下: 画面拡大 右下: サポートサイトを開く
問題選択も解き進めている最中は自動で進むため気にならないが、再度解き直そうとすると詳細のわかりにくさや1問1問転がるような移動が面倒になってくる。
お洒落なデザインとテンポのよさを両立しようとしたのだろうが、シンプルを履き違えて不親切にすらなっているように感じる。
このパズルで最も優先したことは何だったのか、真意は制作者にしかわからないだろうが、マヌケの目にはどれを最優先に仮定したとしても中途半端に映った。
追記
新ギミック2種を導入した新問と実績機能を追加する大型アップデートが実施されたので、それに関する追記。
リリースノートを見るにUIにも修正が入ったらしいのだが、おそらくヒント機能の追加とアンドゥにリスタート機能が付属されただけで、わかりにくいアイコンやまどろっこしい問題選択システムはそのままである。
一応、詳細な説明文が公式サイトで確認できるようになっている。別ページを設けるでもなく、トップページからしてアイコンの説明というあたりに少なからぬ問い合わせがあったのだろうかと勘繰ってしてしまう。
肝心の新問についてだが、親切なことに条件達成済み実績の解除も併せて最初から解放されていたのだが、内容をさっぱり忘れていて新しい要素が判別できなかったことと移動システムが面倒なこともあって、結局最初からやり直すこととした。
追加されたのはマグネットとロックで、どちらも対称性を壊しそうで嫌な予感にさせてくれるギミックではあるが、しかしながら全く存在感がなかった。実績解除されたことでそれが新ギミックであるとようやく気づいたほどだ。
このパズルでは操作が連動する “↘︎” のギミックが非常に強力なので、これを超えられないと印象には残らないだろう。
最初からやり直したことで感想がまた変わったというのもあるかもしれないが、テンポのよさもむなしく途中で単調さに飽きてしまった。初見の時はそこまで強くは感じなかったので量や割合の問題だろうか?
こうして振り返ってみると、おつまみパズルではないという直感は間違いではなかったらしい。