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パズルゲーム感想アーカイブ

自由による蹂躙 “Queen Rules”

ギミックを作ることが楽しくなってレベルデザインがおろそかになることはよくあることだけど、まさかルールの段階で楽しくなってしまうことがあろうとは!

グリッド制の盤面でまばらに集まった兵士をそれぞれ引き伸ばしていき、全てのマスを兵士で敷き詰めるパズル。いわゆる一筆書きパズルに相当する。
兵士にはそれぞれ一筆の最大距離を示す数字が設定されているのだが、一筆書きの操作を行うと、先頭を1として軌跡上のマスで兵力を均等に分け合い、余った分は列が昇順となるように分配するというルールがある。例えば6の兵士を引き伸ばした場合、5/1→3/2/1→2/2/1/1→2/1/1/1/1→1/1/1/1/1/1といった具合に数字が崩れていく。
この軌跡のルールによる選択肢の広さがこのパズルの特徴である。1以外の数字は全て一筆の始点となってしまいはするが、裏を返せば同じ始点でも隙間と数字の許す限り別方向に伸ばし放題ということでもある。例えば1マスの隙間などは一筆書きパズルでは陥りがちな落とし穴だが、このパズルならば動き出す前に後ろの1マスを埋めることで容易に回避できる。
始点同士の兼ね合いで窮屈になりやすい一筆書きパズルでありながら、自由なパズルとなっている。

しかしながら、自由に傾くばかりで自由を押さえつけるものが存在していない。数字の崩れ方はレベルデザインに全く反映されていないどころか、ただいたずらにパズルを簡単にしているばかりである。数字のルールを縛った純粋な一筆書きパズルとして解いてしまえる問題は多い。
数字の崩し方を考えなければならない問題も皆無というわけではないが、初期位置から1をばら撒くか大きな数を3マス進ませて2分割するかのどちらかで、真にこのパズルの特徴を生かした問題はなかった。

だが、このパズルの単調さはそれだけで留まってはいなかった。
このパズルには障害物として敵兵が設置される問題があり、そのマスは敵兵の数字以上の兵力で上書きしないといけないのだが、それに対抗する存在としてプレイヤーは数字の合成ができるようになってしまう。
女王の兵士は同じ数字が隣り合っている場合に限り数字を足し合わせて一つの兵士に合体することができるが、一体何を考えて設定したのか、同じ数字が連なる限りどこまでも足し合わせることができてしまう。
これはつまり、わざわざ数字の分割や組み合わせを考えるまでもなく、どんな数字だろうと1の列にまで引き伸ばしてしまえば尺取り虫の如くどこにでも移動することができ、さらには散在する女王の兵士をいくらでも吸収できてしまうということである。
仮に合成を隣同士に制限したとしても、2の冪乗は簡単に用意できてしまうので大して変わりはないのだが。
一筆書きパズルにおいてはチートに等しい始点の移動を、重ね合わせまでセットにして考えなしに組み込んでしまう浅慮によって、全く手応えのないパズルになっていた。

重ね合わせを条件付きで認める一筆書きパズルというものはいくつかやってきたけど、始点の移動に関しては流石に記憶がない。そう呼べるかもしれないものはいくつかあるけど断言するには自信がない。
一筆書きパズルの枠内で始点の移動って取り入れられるものなんだろうか?