ファンシーエログロナンセンス “Rusty Lake Hotel”
着飾っても拭えぬ血生臭さ。
それがこの世界の魅力なのかもしれないが……。
不気味な湖 “Rusty Lake” に浮かぶ小島に佇むホテルを舞台としたレガシーなポイント&クリック。
ホテルには運命に導かれるかのように訪れた5人の客たちが宿泊している。ホテルが提供する最高のサービスは天にも昇るような至高のディナーだ。主人公はホテルに勤める従業員の一人として、客たちをもてなす傍らで食材を集めてくるよう命じられる。
客はそれぞれが異なるパーソナリティと要望を持っていて、それを体現しているかのごとく珍妙に飾られた客室に宿泊している。
つまり5個分の謎解きの大枠があり、それぞれに異なる枠組の謎解きが詰まっている。
とはいえ、枠組の主軸は皆同じで、情報を集めて対応する箇所で使用するという点でほぼ共通している。
しかも情報同士を結ぶにあたって解決すべき事柄の層が挟まれることはないので、その内容はほとんど点つなぎと言える。
それぞれの客室でやらされることは色々とあるが、それらに手順の絡み合いはなく独立していて、それらを全て完了することで接待が終わるという構図で変わりない。
だからといって簡単というわけではなく、このゲームは一つ一つの手続き、情報を結ぶ線の理屈を儀礼的にすることで難しくしようとしているが、しかしながらそこにパズルと呼べるほどのねじれはなかった。
さらに、一部の食材の在処に取得時期を限定したノーヒントのかくれんぼがある始末である。それらの手掛かりはほぼ皆無であり、中には諦めて外部ヒントに頼ったものもある。
つまり、マヌケにとっては謎解きの面白みに欠けるだけでなく、時に作業じみた総当たりをやらされるという単調なゲームだったということだ。
このゲームの魅力はポイント&クリックとしての謎解きの複雑さではなく、一つ一つの儀礼的な対応関係とそれを保証する物語のほうにあるように感じたが、パズルとしてのつまらなさを差し引いたとしても、やはりマヌケは好きになれそうにない。
理由は大きく分けて二つある。
一つは物語を通して一貫しているエログロナンセンスな趣向である。
レシピ一覧を見れば食材集めという名の客狩りをさせられることは一目瞭然で誰もが早々に察することができるだろうが、それがマシに見えるほどにこのホテルでは生々しいことを色々とやらされる。特にブラックベリーとサンドイッチに関しては本当に最悪だった。
プレイヤーにそこまでやらせようとする物語上の正当性や感覚を麻痺させる脚本上の工夫等がないため、ゲームを楽しもうにも理解不能かつ生理的嫌悪を催す気持ち悪さのほうが勝る。
そして、もう一つは儀礼的であるがゆえに謎解きがいちいち回りくどく感じてしまうことである。これは謎解きをする動機だけでなく達成感を欠く理由にもなっている。
物語の導入で客がホテルに訪れる理由とホテルが彼らをもてなす理由とがあると言及される通り、その理由のために踏むべき手順があるというのはマヌケでも察しがつく。おそらくは彼らの語られざる過去だろうか。
だがマヌケとしては目の前に凶器として十分な物を差し出されると、それで全員殺してしまえばいいじゃないかと思ってしまう。やるべきことはわかっているね
と言われて渡されたナイフで、肉ではなく紐を切るとはなんて遠回りな。
この二つの不満がなぜ生まれたかは簡単な話で、この作品単体で完結しているわけではないからだ。
“Rusty Lake” シリーズ作品の一つとして、この物語で語られること、そしてこの物語で語らなければならない理由があるのだろう。他作品の説明文を読むだけでも仄暗さとキャラクターに共通項があることはわかる。
だが私はそういった設定のジグソーパズルは嫌いだ。設定を切り出すことで犠牲になるのは謎解きの達成感や物語に没入する気持ちだ。後から暴かれる秘密をまとめれば後から納得が着いてくるのかもしれないが、それでは遅いのだ。
この作品が続き物の一部でしかないことはあらかじめ知っていたので、もし面白かったらシリーズ作品をまとめて買おうかと思っていたけど、あいにくマヌケの好みと合致するようなものでもなかったし、また精神攻撃を食らいたくもないので、この錆びた湖を再訪することはないだろう。