接待影絵 “Shadowmatic”
はたしてマヌケは合致判定に何回異議を唱えただろうか?
与えられた立体物を回したり位置を移動させたりすることで、背景の壁に映した物体の影で確かにそれとわかる影絵を作るパズル。
正解の絵は問題集のエリアによる分類でかろうじて察することができる程度で基本的にはノーヒントだが、今の影の形がどれだけ正解に近づいているかを示す6段階のメーターがある他、必要であれば正解に関するヒントを別途段階的に文章の形で閲覧することのできる機能もある。
また問題ごとに設定された正解とは別にシークレットのお題として最初から目標の形が提示されたものがいくつかあり、それらを達成可能な問題を探してシークレットの影絵を作るという実績もある。ちなみに6段階のメーターはシークレットのお題にも反応する。
このパズルでは道を見失わせないための親切な誘導がなされているが、操作性はそこまで親切ではない。
回転はともかくとして深刻なのが移動で、オブジェクトが複数ある場合は一つずつ選んで動かすのではなく、なんと全てのオブジェクトの向きを固定したまま位置関係をずらすというもので、直感的な操作からほど遠く、思うように動かせなくてストレスが溜まりやすい。
こんなゴミのような操作性にもかかわらず、制限時間付きエンドレスモードやボーダーラインが非常に厳しいタイムアタックの実績があるのだからわけがわからない。こういった要素を入れるということは、つまりこの操作性は妥協の産物ではなくそういう遊び方を気持ちよく行うことができるという自信の上に存在していると思われるのだが、その自惚れは一体どこから来たのだろうか……。
ヒントメーターも実際そこまで親切というわけでもない。たった一個のオブジェクトの問題ですらあと一歩を執拗にこだわってきたりするし、また参照しているのは正解のイラストだけなのか、それっぽい形に仕上げたとしても上のパーツと下のパーツとで向きが左右逆ならば正解にならないし、左右が一致していても角度を間違えて上下の縮尺が合っていなければ当然正解にはならない。これらの細かなずれが積もり重なって、お題はわかるしそれっぽい形も作れるのに、時に正解に全く辿り着けないという状況に陥ることもある。
全体を動かすというわけのわからない移動方式を採用したためか、3個のオブジェクトがある場合は位置の一致は2個だけ揃えればあとは向きさえ合っていれば勝手に正解扱いにするというルールになっている。一見すると判定基準の引き下げは親切なように見えるが、無視した物体に依存したずれを引き起こしてしまいかえってややこしくさせている。
位置の合致も何と何に反応しているのか判別しにくいし、反応した物体の組み合わせに引っ張られてヒントメーターが機能しないこともある。逆にちょっと動かしただけでメーターが一気に進んでクリアに到達するという納得から遠くかけ離れたようなことも起こりうる。
しかしながら、それらは所詮外面の欠点に過ぎず、このパズルは原始的なところで致命的な欠点を抱えている。
影絵作りの面白さとは投影と単純化によって一定のまとまりを持った何かを作り出す創造性にあると思うのだが、このパズルの場合はその答えがただ一つに定められているため影絵作りの自由な遊びからはおおよそ遠い。
気づかないうちに揃えば気持ちがいいかもしれないが、知らず知らずのうちに揃うのと特定の一つの答えに向かって揃えにいくのとでは全く違う。このパズルを解くアプローチとは自由気ままに動かしながら偶然できる形を面白がるものではなく、ヒントメーターに迎合してゲームが要求する形を作ってやるものでしかなく、そこには影絵作りの面白さもなければパズルとしての面白さもない。
その内容はパズルを自称する何かであり、さながらヒントメーターのご機嫌取りとでも言うべきものだった。